ドキ☆恋する男の大争奪戦 4
あれから幾月の時が経ったであろうか・・・・・
死闘の限りを尽くしたマラソン競技。知恵と勘を振り絞ったクイズ大会。
それは、余りにも長い闘い。今この時になろうと決着をつけていない闘い、それこそ輪廻と呼ぶに相応しい・・・
「輪廻になってないから!廻ってないから気持ち良くナレーションしないで下さい!」
優勝賞品であるが、大勢の仲間の気持ちを代弁してツッコミを入れた。
ナレーションを止められたガーランドは、静かに振り向くと、潔く諦めて司会の役に戻る。
観客へ向けて、分かりやすい説明をしたつもりだったので、少しだけ寂しくなりはしたが。
「・・・・えー、一度改めて各得点を割り出してみるか」
「私は覚えています。1位はWOLで51点、同率2位がフリオニール、セフィロス、ケフカで50点。
・・・・・・あとは大して点のないゴミ虫のようなものですわ」
「「「誰のせいだ!!!」」」
点は持っているのに勝手にゴミ虫扱いされた面々が叫ぶが、発言者であるアルティミシアは聞こえてないかのようにシラを切る。
まぁ誰のせいかと聞かれればガーランドだろう。勝手にクイズの得点を大きくしたので。
2問目で見事のスリーサイズを当てたセフィロス、そして同じチームであるケフカにも50点が与えられ、唯一マラソンで1点獲得していたWOLのみが、僅かながら抜き出る形となっていた。
ちなみに正解したものの前回負傷したセフィロスは、気絶をしたまま放置され、得点はあるものの起きない限りスルーされるだろう。事実上棄権である。
このクイズ大会はまだまだ2問目。途中である。この1問正解50点ルールが続くなら、ライバルも1人減ったことだしいくらでも逆転は可能だ。
変に不正を指摘して違う競技に移ってしまうよりは、クイズを続けて1位に追いついておきたい。
「・・・・・・バッツ、もう余計なこと言うなよ」
「わーってるよ。俺もダラダラ続くようだったら、普通に帰って遊びたいし」
「ティーダ、マラソン結果が反映されないのは絶対ムカつくから、何が何でも次当てるぞ!」
「もちろんっス!」
バッツ・スコール組、ジタン・ティーダ組はそれぞれ静かに闘志を露わに決意した。
「ここからはサクサクいくぞ!問題ももっと分かり易いものにしようと思う!暗闇の雲!」
「分かっておる」
暗闇の雲は一歩前に出ると、を手招きした。
「よ、少々手伝ってもらうぞ。ここに来るがよい」
呼ばれたは素直にエクスデスから出て、暗闇の雲の隣まで来る。
すると突然、の体を黒い闇が覆った。
「ぎゃ!?」
「オイ、何をしている!!!」
「安心せい、自身に害はない」
全身すっかり闇に包まれてしまい、の姿は見えない。
そしてを包んだままの闇は、参加者の目の前で4つの闇に分裂した。
「さぁ第三問の始まりじゃ。本物のを当てよ」
「「「!!!」」」
闇から上半身だけを抜け出したような形で、黒いが4人、姿を見せた。
髪も肌も瞳の色も、何もかも全て黒い禍々しい色に染まったである。
4人のは口々に叫んだ。
『え、嘘、何これ、ぎゃー助けてー!』
『ちょ、まっ、ええええ!?どうなってんのこれ!!』
『すっごーい!黒!肌黒!!』
『何で私が4人もいるの!?ちょ、出して!出してよ!!』
会場がどよめく。
姿形は全く一緒。唯一のヒントである、彼女達の言葉から本物を1人導き出すしかない。
しかしここから4人のは、それぞれ普通のヒロインがしそうもない考えばかり口にした。
『ねぇこれ本当に体に害ない!?大丈夫!?』
『・・・・・・・・・・・だるい』
『あっお腹空いてきた。何か食べときゃ良かった』
『・・・・いや、これ無理でしょ。どれが正解とか分かんないでしょ』
思わず全員が眉間に皺を寄せる。
何故だろう、
アホっぽい感じがどれもっぽい。
直ぐに判断出来ず、誰もボタンを押さずにジッと4人のを見る。
そんな中、1人周りとは違う表情――もとい浮き足立つような高揚した表情を浮かべながら、皇帝は挙手をした。
「暗闇の雲よ、この問題が終了した後、1体私にくれないだろうか?」
『『『『気持ち悪っ』』』』
4人のの声が揃った。アレだけバラバラの事を言っていたのに、奇跡が起きた瞬間であった。
しかしこの一連の流れが、ある男の疑問を直感へと変えさせた。
ピコン
音と共に、ボタンを押したチームに勢い良く周囲の視線が送られる。
今の全く一緒の反応をした後で、どれが本物なのか分かったと!?
大半の者がそう思ったであろうが、しかし回答者と同じように疑問を持っているものは他にもいた。
ボタンを押したのは、バッツであった。
「あ、えーっと・・・・・なんとなく押しちゃったんだけど・・・・俺、4人ともに見える」
「はぁ!?姿は一緒なんだから当たり前じゃないか!君、目がオカシイんじゃないの?」
「いや、そーじゃなくて!4人とも、本物のだって事!!」
クジャの指摘に、負けじとバッツは声を張り上げる。
バッツ自身、確信がある訳ではないから弱気であるが、感じた事に嘘偽りはない為、思わずボタンを押していたのである。
しかし、そう思っていたのは確かに他にもいて。
「・・・・実は、俺も思っていた。俺も全員、だと思う」
同じチームで隣に座っているスコールが、ハッキリと暗闇の雲を見て言った。
ジタンや他のコスモス組も、思いは同じなのか、表情は弱気なままでも目と目で気持ちを共有し合う。
その様子を見て、暗闇の雲はクスリと笑う。
「見事じゃ。これは全て!の胸の内にある想いを片っ端から拾い上げてみたまでよ」
暗闇の雲が再び4つの闇を1つに纏めると、次第に闇は薄まり中からが飛び出した。
ワッと歓声が上がる。
「バッツ・スコールチームに50点!」
「よっしゃあああああああ!!!」
バッツは万歳をして喜んだ。
「チェッ、これならオレも押しときゃ良かった・・・!」
純粋に悔しがるのはジタンである。全員ではないか?というのはずっと頭にあったので、尚更悔しい。
「なんだよ、結局どれを選ぼうと、一番先に押した奴が勝ってたって話かよ」
「フッ、誰でも答えられる、簡単な問題であったろう?」
「・・・・・・・・・・私は凄く恥ずかしいんですけど」
ジェクトの愚痴に得意げに答える暗闇の雲であったが、自分の気持ちがダダ漏れしていたと知ったには、最悪な問題であった。
「さて、クイズ大会はこれにて終わりとする。次の競技に移るぞ!」
「なぁ!?ちょっと待て!私はまだ1問も答えてないぞ!」
「正解出来ない貴方が悪いのでしょう。皇帝ともあろう者が、見苦しいですわ」
「ならばせめて、さっきの暗黒をく
うぼぁ!」
「うるさいよ」
とうとうクジャにまで攻撃され、皇帝はその場に沈む。
どうやら皇帝と同じく、クジャも全く得点を稼げていない為、イライラしてきたのだろう。八つ当たりがでかい。
仕事だと割り切っているのか、観客兼大会運営委員の面々がせっせとクイズ用のセットを片付ける。最早ツッコミはいないようだ。
に対しても、ここまで来れば逃げることはないだろうと判断されたのか、普通の観客用の椅子が用意された。
そしてクイズセットと入れ替わるように、次の競技に使われるであろう道具が運ばれてくる。
その量と種類に、参加者は「え?」と目を見開く。
調理道具に大量の食材。更には大量の布と糸。
「えっ、これって・・・・」
「次の競技は、ずばり家事対決!これから料理と裁縫をしていただきます」
「「「えええええええええ!!!?」」」
殆どの者が驚きと不満の声を上げた。
「料理ぃ!?そんなことまでやんの!?」
「大事なことですわ。特には料理も裁縫も決して得意とは言えない程度ですので、男共も出来るようでないと」
「ちょっと待てー!決して得意じゃないってどういう事だ!そこらの男よりは出来るわー!!」
「はそう言っても・・・・・・正直どうなのかしら?ゴルベーザの弟くん?」
「え?そうだねぇ・・・・・」
アルティミシアに聞かれ、少々目線を上空に移し「んー」と考えたセシルは、次の瞬間ニッコリ笑って言った。
「料理は美味しいけど、どちらも兄さんの方が上手かな!」
その基準は高いのか低いのか。
何にせよ、既に道具は準備されている為この競技に変更はない。
しかしとうとう不満を抑えることが出来ない者が現れた。
「あ゛ーもうやだ!嫌だ!僕料理も裁縫もした事ないしやりたくない!!競技変えてよ!!」
クジャである。なんだかんだ、ずっと彼にとっては不利な競技であった為、ついに怒りが爆発した。
むしろここまで良く耐えていたと言って良いだろう。
クジャの周りには白い球が輝き出し、危険なオーラを纏い始めていた。
「変えなきゃ全て破壊するよ・・・!」
「オイ、クジャ!やろうってのか!?」
「・・・・・邪魔をするならば、容赦はしませんよ?」
ジタンとアルティミシアが戦闘態勢に入る。
が、それよりも先に、手を下す者がいた。
ちゅどーん
クジャに雷光が落ちる。ジタンでもアルティミシアの技でもない。
「え?」と全員が発信源を振り返れば、コスモスがニッコリ笑っていた。
「さぁ皆さん、楽しく大会を続けましょう」
横でガタガタとが震えていたので、間違いなかった。
黒こげになったクジャは、ゴルベーザによって仲良くセフィロスの隣に並べられた。
「では再び説明をする!ルールは簡単、が喜ぶ料理を作り、の為に破れた装備を直すのだ!
食材や道具はある程度用意したが、ここにない物を使っても良い!
また裁縫に関してはその実力が分かれば良いので、実際破れた服を縫うでも良し、新たに装飾品を作っても良し!
今回は審査員として、参加していない我々で点数をつけるぞ」
「質問ー!今回チームとかはあるの?」
「特にない。自由だ」
それを聞いてジタンはニヤリと笑う。
「それでは、競技開始!!」
ドォーン
死んだ魚のような目をしたオニオンが、中華なべを叩いた。
5
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あとがき
人数はここから更に減らしていきます。
50点なんて、馬鹿なことを・・・!と2年前の自分を恨めしく思いつつ、新たに思いついた方向で書いていったら
思ったよりまともになり、楽しくなり、余計に長くなっていく気がする。
コスモスはこの大会を誰よりも楽しく見ているので、妨害する者は誰であろうと許しません。
あ、ついでに。カオス勢で言えば、私は皇帝贔屓です。見りゃ分かるか笑
好きというには、歪んだ愛情ですけど。弄りたい。
更新日:2011/06/29