ドキ☆恋する男の大争奪戦
「私は常々思う。何故はコスモス側なのかと」
「・・・・・・・・・はぁ」
「力の差を卑下ているのではない、あちらに何人集まろうと虫けらに変わりないからな。だが一人多いのは確かで」
「貴様のようなひねくれ者ではないからじゃ」
カオスの陣地、カオス神殿。突然ボヤきだした皇帝に、暗闇の雲はサックリ釘を刺す。
近くにいたゴルベーザは何と声をかければ良いか分からず曖昧な返事をしたが、しかし皇帝に賛同する者は他にもいた。
「を我が陣営に?良いよ、彼女は美しいからねぇ。僕のコレクションに加えてあげる」
「えー!はボクチンの玩具だよ〜?」
「何を言う、を支配するのはこの私だ!!」
・・・・・・正確に言えば賛同したのではなく、欲望をぶちまけたのだが。
クジャとケフカと皇帝はむぐぐと三つ巴の状態で顔を近づけ睨み合う。
それぞれまともじゃない愛で方でが欲しいらしい。
今ここで決着をつけんばかりの3名に、アルティミシアが一喝した。
「待ちなさい!実際にを手に入れてない状態で争うのは無意味。ここはも周りも納得させる方法をとりましょう」
不敵な笑みを浮かべる彼女に、その場の全員が目をパチクリさせる。
魔女が考える、明らかな悪巧み。暗闇の雲が口端をニヤリとあげた。
「ほぉ?どうするのじゃ」
「私に任せて下さい。ゴルベーザ、手伝っていただきますよ?」
「・・・・・・・いいですとも」
アルティミシアが何を考えているのか、ゴルベーザには分からないが、自信満々な彼女、そしていきり立っている3名を落ち着かせる為にも、頷くしかない。
にとって悲惨なことにしかならない気がするが。
「・・・・・すまない」
こうしてカオス陣発端の争奪戦の幕開けとなった。
「ねぇ、ちょっといい?」
「なにー?」
セシルに声を掛けられて、は振り向く。
すると彼は少し申し訳なさそうな表情で、を手招く。
それは、他のみんなとは少し離れた場所。
近付いたに屈んで視線を合わせると、セシルはひそひそと他には聞こえないような小声で喋った。
「実は僕の兄さん、ゴルベーザがを呼んでるんだけど」
「えっ?何で?」
「分からない。ただと話がしたいって」
ゴルベーザはセシルにとってかけがえのない兄、だが敵である。
しかしゴルベーザの人の良さはも知っているし、実際メンバーに内緒でこっそり会っているセシルだが、何も問題は起きていない。
ゴルベーザは信頼出来る人物だ。
セシルも皆にとっては敵だと分かっていて、公にそんな話をすれば絶対周りから反対されると思ってだけを呼んだ訳だが、
そんな彼の杞憂に応えるよう、はアッサリ承諾した。
「分かった。奥にいるの?」
「うん、ありがとう」
兄の願いを叶えられてパァッと笑顔になるセシル。
あぁ、本当に美人だなぁ。セシルの笑みに少し照れつつ、は奥へと入った。
1つ2つと岩陰を縫った先にゴルベーザはいた。
仁王立ちしていた彼は、を見るや否やビクッと肩を震わせる。
アレ?とは不思議に思いつつ近付いた。
「話したいことって何ですか?」
「・・・・・には悪いと思っている。だが無益な争いを起こさない為に、一時大人しくしていてくれないか?」
「へ?」
「エクスデス!」
一瞬の出来事だった。
ゴルベーザの掛け声でエクスデスがの背後に現れたのだ。
「ファファファ」
「ぎゃっ!?」
反応出来なかったはあっさりとエクスデスに捕まる。
謀られた―――しかしゴルベーザがそんなことをするなんて信じられない。
実際に、あの時のセシルと同じように申し訳なさそうにゴルベーザはに頭を下げていた。
「どういうこと!?」
「大人しくしていれば危害は加えない。それだけは約束する」
「何が目的?説明して!」
「それは・・・・・」
ゴルベーザが言葉を濁していると、その背後に、まさかのカオス陣全員が現れた。
え゛っとは固まる。
そして一同はそのままコスモス陣営を見下ろせる崖上に移動した。
突如現れた敵軍に、コスモスメンバーは驚く。
「っ!?」
「なっ、カオス軍!?何故ここに!?」
「・・・・?」
ジタンは目を疑った。
カオス陣が勢揃いしている中に、が、エクスデスに片手で掴まれ身動き一つせずぶら下がっている。
まさか、そんな、が。
気付いた他のメンバーも必死に呼び掛ける。
「!!」
「返事をしてくれ!」
「ーーー!!」
「コスモスの僕たちよ、よくお聞き」
アルティミシアが右手を前にかざしコスモスの戦士達を制止する。
そして言い放った。
「これより、第一回争奪戦を開始する!」
「「「・・・・・・・・・・はい?」」」
ほとんどの者が目を見開き、聞き返した。
えっなに?今何て言ったの?
バッツが代表して片手を上げた。
「質問ー、は人質じゃないんですか?」
「ええ、言い方が悪いですが争奪戦の優勝賞品、ということになります」
「じゃあの体を
ザパザパーってしたり、
ホニャニャニャーンしたりした訳じゃないんですか?」
「その阿呆らしい表現やめてくれる?」
堪えきれなくなったがムクリと顔を上げ、冷めた目をしている。
ユーリは攻撃を受けて気を失っていたのではなく、ただ単に気力を削がれて無抵抗でいただけだった。
その姿に一部は感動する。
「・・・・!」
「良かった・・・!、生きてた・・・・!」
「いや嬉しいことだけど、
それ以前に有り得ないことが起きようとしてるからね、今」
バッツ達の緩いやり取りで既に冷めたオニオンは、これが深刻な状況や一大決戦ではないと悟って投げやりになる。
とりあえずが元気ではないが、生きてるので問題ない。
「に危害は加えていない。ただ優勝者が、あなたの考えてるようなことをするかもしれませんが」
「ほぅほぅ」
バッツは頷いて何かを納得した。
アルティミシアは続ける。
「参加は自由です。今のところ皇帝、ケフカ、セフィロス、クジャがエントリーしていますが、そちらはどうします?」
「えーどうしよっかな」
適当なことを呟くバッツを、クラウドとスコールが肩を掴んで押さこむ。
バッツに任せてたらどうなるか分かったもんじゃない。
入れ替わるようにフリオニールが前に出た。
「ふざけるな!は俺たちの仲間だ!!お前たちと奪い合うようなものではない!!」
「この状況で良くその言葉が吐けるのぅ。主らの仲間であったら、は既にここにはいないであろうぞ?」
暗闇の雲がニヤリと口端を上げる。
覆しのない正論に、フリオニールはクッと唇を噛んだ。
更に暗闇の雲は追い討ちをかける。
「それにお主も参加すればよい。を自分のものにできるぞ」
「ぶっ!!」
唐突にその手の話を振られるとフリオニールは弱い。
顔を真っ赤にして頭から湯気が出ているフリオニールを慌ててティーダとセシルが引っ込めると、みんなで輪になってひそひそとコスモス会議が開始された。
「ごめん、僕のせいでが」
「気にするな。こうなれば実力で取り戻すしかない」
「オレ出るよ。絶対にクジャには渡したくないし」
力強くジタンが名乗り出ると、WOLは頷く。
「私も出よう」
「お、俺も出る!」
「面白そうだから俺もー!」
フリオニールとバッツも賛同して、今のところ4人。
WOLも参加することだし、任せて大丈夫だろうとクラウド、セシル、ティナとオニオンは見守る側になることに決める。
スコールは再度アルティミシアに確認した。
「こっちに人数制限はないんだな?」
「えぇ、何人でも。ただし真にを欲しいと思うことが参加条件ですよ」
意味深な言葉を付け加えてアルティミシアは微笑む。
スコールは数秒黙ったが、ガンブレードを担いで決意した。
「俺も出よう。こっちが多いに越したことはない」
「そっスねー、じゃあ俺も!」
「あ?ケツの青いガキが女を巡っての争いに参加する気か?」
「うっせーな親父!は大事な仲間だ!」
「ふん、その甘い考え俺がへし折ってやる。おい、俺も参加するぜ」
明らかに別の思惑を挟んだ参加理由だが、本来の目的からして、盛り上がるのならそれで良い。
そう、盛り上がるのなら!
ゴルベーザが後方に向かって目配せすると、信じられない人物がゆっくりとやって来た。
「楽しい大会をやると聞いたのですが・・・・・・・これからですか?」
光を放ちながらやんわりと微笑む彼女。
みんなで、一斉に叫んだ。
「コスモスぅううう!?」
2
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あとがき
とりあえずUPしとけば、否が応にも続き書くかなって・・・(殴)
壮大な逆ハーの始まりです。まだ中身煮詰まってません。ちゃんと終わるか分かりません(ここ大事)
でもあくまで普段よりちょっと長い短編のつもりなので、完結しないことはないと思いますが、長期戦になる予感。
人数多すぎて捌き切れないので、こんな感じで話は淡々と進んでいきます。
良ければ少々お付き合い下さい。
更新日:2009/08/08