大切なもの探し





「制限時間は12時まで」
「またここに集合ね」
「よーし、じゃあ誰が一番貴重なアイテムを手に入れるか」
「勝負だ!」

ここは秩序の聖域、の隣に位置する次元の中。
アイテム稼ぎに、バッツ、スコール、ジタンの4人で出掛けた訳だが、この4人が集まると大抵勝負事に話が進む。
そして今日も例外なく、勝負をすることになった。
誰から言い出したのか、それはジタンかバッツのどちらかしかいないのだが、やる気満々なのもやはりこの2人。
一番にジタンが駆け出すと、そのモノマネをしてバッツが追いかけていった。

「真似すんなよー!」
「へっへー取ったもん勝ちだからな!」

そんなやり取りを残して、あっという間に姿が見えなくなっていく。
そしてスコールはそんな2人を見送ることもなく、無言でいつの間にか別方向へ歩いている。

「じゃ、私はこっちから行こうかな」

そうして残った方向へは歩く。これがいつものパターンだ。
本来なら自分の勘を頼りに進む方向を決め競争心を持つべきなのだが、アイテムは急げば良いというものではない。
特に貴重なアイテムとなると、如何に敵に遭遇できるか、そしてライズできるかという運試しになる。
拾う可能性もあるが、まぁ兎に角次元の最奥まで行ったから良い物が手に入るとかいうことではないので、急ぐ気はない。
ほんの遊びで付き合ってるのだ、そんなに本気になるつもりはにはなかった。
最初のスタート地点からそう離れてない場所で、ふいに声をかけられる。

「あっれー?じゃなーい!一人なんて珍しっ」

前方やや高い位置にケフカがいた。
何でこんなところに、と思っても、相手が戦闘体勢じゃないのでこっちも身構えたりしない。
奴はかなりの気まぐれ屋なので、話によっては無駄な戦闘はせずに済む。

「ケフカこそ。こんなところまで珍しい」
「たまには敵地の奥深くまで入るもんだよ〜ん、スリリングで楽しいじゃない」
「じゃあ悪かったね、私1人で」
はいーよぉ、むしろムサい野郎がいなくて良かった」

ケフカはとても上機嫌らしい。
一応敵同士であるから馴れ合いをすべきではないんだろうが、どうやらはケフカに好かれている。
も別にケフカに私怨があるわけでもなく、道化師だと知ればその言動に少なからず抵抗を感じなくなるので、嫌いじゃない。
これはケフカに限ったことではなく、セシルとゴルベーザが特殊過ぎる良い例として、カオス側にも普通に話せる奴はいる。
は出会ったついでに訊ねた。

「ねぇ、なんか良いアイテム持ってない?」
「え?勝負したいの?」
「持ってるアイテム教えてくれたら助かるんだけど」
「ざーんねん、今日はそんなに持ってきてないな〜」

そう言いながらケフカは服のあちこちを捲って数個アイテムを取り出す。
ポーション、うさ耳フード、すべすべオイル、石ころ・・・・・・出てきた物には違和感を覚える。

「・・・・・・・それって、いる?」
「べっつに〜、なんとなく持ってるだけ。さっ、勝負する?」
「うーんどうしよう・・・・・」

どれも多分戻れば仲間の誰かが持っている。
能力的にも特に欲しいというものではない。
あんまりテキトーなものを持って行ってもやる気ないって非難されるしなぁ。
というかケフカと戦って痛い思いをする程のものであるのかという点も大きい。
むむむとが悩んでいると、あっと思い出したケフカが楽しそうに笑った。

〜、面白いもんなら持ってるよ」
「えっ、面白い?」
「そっ、アイテムと言い難いけどなら装備出来るかも」

そうしてケフカはるんるんとスキップでユーリの目の前までやってきて、じゃじゃーんとある物を取り出す。
取り出したものに、は噴き出した。

「ちょっ、えっ、それってクジャの!!」
「ぴーんぽーん大正解ィイイ!今朝貰ってきちゃった」

ケフカが楽しそうにぶら下げているのは、股間に目が行くあのクジャの服下半身である。
なんちゅーもん持ってるのお前ぇえええ!!
もはや完全に警戒も何もない仲良し女子高生のノリで(あくまでノリだけ)とケフカははしゃいだ。

「うわっすごっ、本物!?本人の!?」
「正真正銘の本物!寝ている隣から頂戴したんだから」
「・・・・・・・・本当に貰ったの?」
「細かいことは気にすんな」


恐らく盗んだのだろう。今頃当の本人はどうしているのか。
がマジマジと見ていると、ケフカはに肩を寄せて顔を近付けた。

「これだったら交換でいーよん」
「何と?」
の身に着けてるどれかと」

ケフカの交渉には自分の装備を見直す。
ぶっちゃけクジャ衣装はいらないが、貴重っちゃ貴重な物だろう。
ジタンもいることだし、アイテムのインパクトとしては効果大だ。もしかしたら優勝出来るかも。
いらないものに違いないので、貴重な物にカウントされないかもしれないが、キープしとくに越したことない。
今なら戦闘せずに手にはいるし。
そこでは、装備していた髪飾りを外し、ケフカに差し出した。

「これじゃダメ?」
「んーまぁクジャのだし、良いよ。交渉成立〜!」
「ありがと」

お互いに物を交換して、笑顔で手を振るとケフカはその場を去っていった。
ぱんぱかぱーん!クジャ衣装下を手に入れた。
・・・・・・・・・・いきなりかさばるアイテムを手に入れてしまった。
はクジャ服を脇に抱えると次の空間へと入っていった。



それから歩くこと1時間。

道中ポーション等の定番アイテムを拾いつつ、は月の渓谷内を進んでいた。
ここなら辺りが暗く視界が悪いので、アイテムの取り忘れもあるかもしれない。
それが貴重であればあるほど気付きにくいものだ。
慎重に目配せしながら歩いていると、どこからか轟音が聴こえてきた。

ゴゴゴゴゴゴゴ

「・・・・・・・・・うん?何?」

何か物凄い圧力が、迫ってきているような・・・・・・・・気になって立ち止まり、は後ろを振り返る。
すると見てはいけないような、むしろ見たくない者が迫ってきていた。

ーーー!!」
「ぎゃああああ変態ー!!」


クジャが鬼のような形相で目掛けて一直線に飛んできている。
しかも下に布を巻いて隠しているつもりなのかもしれないが、風圧やら何やらで、見えている。
変態と呼ばれても仕方ないものが見えている。
パンツぐらい穿けぇええ!
は咄嗟にしゃがんでクジャの攻撃を交わすと、逃げた。

「僕の大事な衣装、羨ましいからって盗るとはどーいうことだいいいい!?」
「羨ましくない!そしてコレはケフカから貰った!!」
「嘘つくんじゃなああい!悪い子にはお仕置きだよ!」

容赦なく攻撃を繰り出してくるクジャ。
普段なら応戦するところだが、最初に見た姿が頭から離れず、無理絶対振り向けない。
あんなんまともに見て戦えるかああああ!!
クジャの服を手放せば良いかもしれないが、一応取引としてこちらも髪飾りを出したのだ。
そう簡単に渡せない。
出来るだけ岩陰に隠れるように、それでいてちょこまかと撹乱するように走れば、なんとかクジャには追いつかれない。
そう思ったのだが。気付かぬ内に渓谷の端へと走っていたらしい。
曲がったその先は崖だった。
なんとかなると甘く見ていたから、表情が消える。

「うっそ、最悪」
「これでお終いにしてあげるよ」
「っ!!」

ドガーン

直ぐに追いついたクジャに、容赦なく魔法を撃たれ、は崖もろとも崩れ落ちた。
ヒラヒラと舞い上がり、残ったのはクジャの服。
の姿はどこにもなかった。


********


「よー!どーだった!?」

約束の時間。集合場所に現れたバッツを見つけて、ジタンは駆け寄る。

「今回は自信あるぜー」
「おっそれは楽しみだなぁ。恥かかなきゃ良いけど」
「ジタンもそう何度も勝てると思うなよ」

ニシシッと笑い合う2人。
お互い自信満々で発表の時が楽しみだ。
だが、残りの2人が現れない。

「・・・・・・・こないなー」
はともかく、スコールはキッチリ時間は守るのにな」
「迷子になってたりして」
「ぎゃはは迷子!スコール迷子!」

勝手に想像して爆笑する2人。
なかなか面白い光景だが、しかしツッコミしてくれる者がいないのでどことなく虚しい。

「・・・・・・・・本当にこないな」
「・・・・・・あぁ」

辺りを見渡しても人の気配などないし、来る気も全くしない。
2人はようやく首を傾げ疑問を持った。



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更新日:2009/06/20