Those who think about you dear
「ってさ、結局誰が好きなの?」
オニオンナイトに唐突に話を振られ、はキョトンと目を丸くする。
隣で聞いてるティナも不思議そうに首を傾げジュースを飲んでいる。
「・・・・どーいう意味?」
「本命は誰って聞いてるのさ」
「別に、本命も何もみんな好きだよ」
「えー」
オニオンはあからさまに疑いの目を向けて非難の声を上げる。
いやそんな顔されたって。こっちがえーって言いたいわ。
は手に持っていたお茶をグビグビ喉に流し込む。
するとティナがとんでもないことを口にした。
「はバッツと結婚するんじゃないの?」
「ぶーっ!!」
思わずは噴き出した。盛大に飛散したお茶を見て、オニオンは一層眉間に皺を寄せる。
うわ汚いとか思ってるんだろう。
しかしこちらとしては体裁よりも有り得ない仮定話の方が深刻だ。
はティナの顔を正面から捉え、ジッと瞳を見つめた。
「何でそうなるの?どうしたらそう思うの?」
「だって、バッツが言ってたよ」
誰かもうアイツの口縫い閉じて。
毎度のことバッツの冗談は規模がでかすぎる。そしてみんな純粋なんだ。振り回されるこっちの身にもなって欲しい。
しかし法螺を吹いているのはバッツだけじゃないらしい。
「え、本当?僕はジタンがは俺の女だからな!って言ってるの聞いたことあるよ」
誰かジタンの口も接着剤で固めて閉じて。
はティナからハンカチを受け取り口周りを綺麗にしつつ、頭を悩ませる。
まぁジタンは割とそういう事を普段から口にしているが・・・・面倒な誤解を生むから勘弁して欲しい。
はキッパリ言った。
「私は婚約した覚えも誰かの物になった覚えもありません!以上!」
「でも良くライトさんやフリオニールとも一緒だよね」
「ふふっ、もてもてだね」
以上とわざわざ宣言したのに会話を続けられた。私何かしましたっけ。
しかもモテモテなのではなく普通に仲間として一緒にいるだけだ。それを全て恋愛絡みと見ちゃキリがない。
は遠回しにそのことを伝える。
「みんなティナのこと大好きだから、ティナもモテモテだよ」
しいて言えばオニオンもモテモテ。みんなモテモテ。
一緒にいるだけで良いならそーいうことになっちゃうよ〜と伝えたかったのだが、にティナ攻略は無理だった。
「ほんと?嬉しいなぁ」
パァッと顔を綻ばせ喜ぶティナ。可愛すぎる。
あまりの眩しさには口元を覆って感激しながら、言い聞かせるのを断念した。
ティナはこのままで良いこのままが良い。ちょっとボケた感じの純粋なティナでいて…!超可愛いから!
がティナを見てほわわーんと和んでいるのに対し、オニオンは同じく頬を染めているものの、口を尖らせた。
「ティナがモテモテなんて当たり前でしょ」
ベタ惚れなのがまるわかりだが、どうしてこうも生意気になれるのか。
イラッとくるよりは、むしろ笑ってしまう。
「そだね、ごめんごめん。じゃあ私はたま介を好きになったげる」
「はぁあ!?」
「私も、たまちゃん好きー」
「・・・・っ!!」
好きな人に笑顔で言われちゃ、生意気少年だってどうしようもない。
の戯れ言など気にしてられず、オニオンは真っ赤になって、穏やかな笑い声が辺りを包んだ。
終わり
・・・・・・のハズだった。少なくともこの会話は。
「あの小僧が、好き、だと・・・・!?」
少し離れた物陰から、こっそり覗き見ていた男が動揺する。
男は慌てて、別次元に走った。
****************
「虫けらー!虫けらー!!」
遠くから人の声がする。
なんだか聞き覚えのある声のような気もするが、大声で虫けら虫けらと連呼してる変な奴には関わりたくない為、無視をする。
倒すべき相手だろう、と誰かに言われても、何だか嫌な予感しかしないし面倒ごとは避けたい。
隣のクラウドも、全く聞こえてないかのように歩き続けていた。
「待て、虫けら!止まるんだ!」
誰かと会話をしているようだ。声は一方的にしか聞こえないが。
「フリオニール、この次元にもう用はないな?」
「・・・あぁ、良いんじゃないか?次の場所に進もう」
違う次元への入り口を見つけたので、互いに全く後ろを振り返ることなく、進もうとする。
と、更に声は必死になり、且つ近付いてきた。
「貴様っどれだけ私が貴様を見つけるのに苦労したと思っているんだ!違う次元にホイホイ移動しおって!!
気配もうっすいしテレポが万能だと思うなこの童貞が!!!」
喚きちらしながらも咄嗟に印を刻み呪文を唱えたらしく、こちらに光の放弾が3発飛んできた。
あと一歩でさよなら出来たのに、と残念に思いつつ緊急回避で攻撃を避ける。やっぱり戦うしかないのか。
戦闘体勢をとりつつ、フリオニールは予想通りの目の前の人物に、溜息を吐いた。
何故俺の宿命の相手は、こんな奴なのだろうか。
「・・・・ってクラウド!?ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
とかなんとか思ってる間に、上手いこと避けたクラウドが次元の先に消えかけていたので、慌てて彼の腕を掴み引き止めた。
「・・・・・で、皇帝。いったい何の用だ?俺達2人を相手に戦うつもりか?」
その場の空気を仕切り直して、一応フリオニールは警戒しながらも皇帝の様子を伺う。
攻撃してきたのは最初の1回のみで、戦闘の意思があるようにも見えないが、罠を仕掛けに来たのかもしれない。
ただ柄にもなく走って追ってきたようで、ゼェハァ荒い息を整えている皇帝はどうやらいつもと様子が違う。
めんどくさがって先に行こうとしたクラウドはムスッとした表情であるものの、観念したのか同じように皇帝の様子を伺っている。
「ハァ、今日は休戦だ。見逃してやる。だから私の質問に答えよ!!!」
皇帝はもの凄い形相で指を突きつけてきた。
「の好きなあの小僧というのはどういう奴だ!!説明しろ!!!」
「・・・・・・・・はぁ?」
フリオニールは目をパチクリさせた。
今何て言った?良く聞き取れない。
クラウドも全く頭に入って来なかったのか、?マークを大量に頭の上に浮かばせている。
「皇帝、もう一度言ってくれ」
「の好きなあの小僧というのはどういう奴だ!!」
「、の・・・・?の事が好きな奴、か?」
「違う、が好きな、あの小僧は」
「が好きな奴?の事が?」
「違う!!!貴様、思った以上に頭悪いな!!の想い人だ!!!!」
そこまでいって、フリオニールはポカーンと口を開ける。
の事を好きな奴はいっぱいいるかもしれないが、が想いを寄せて・・・・・寄せている?誰かに?
は誰かが好き?
え?
「ええええええええええええええ!!!?」
フリオニールは絶叫した。
「い、いいや、気のせいじゃないのか?そんな話、聞いたことないぞ!」
なんとか平静を装うが、フリオニールは動揺を隠し切れない。
の好きな人、そんな人間がいるなんて考えたこともなかった。いや彼女も普通の女性となんら変わらない、恋をするのは当たり前である、が。
ずっと仲間だと思っていたのに、俺らの仲間で、と誰かが、結ばれているのか!?
ショックだ。ショックが大きすぎる。フリオニールの足元がふらついた。
しかしそんなフリオニールを余所に、クラウドはポツリと呟く。
「どうせみんな大好きとか、仲間として好きという話だろう」
冷静なクラウドに、フリオニールは我に返り、上半身を支えて力強く地面を踏み締める。
しかし皇帝はそれでは納得しない。確固たる証拠があるのだから。
「しかし私はこの耳でハッキリと聞いた!が自分で、小僧が好きだと!」
「そもそもその小僧というのは、誰のことなんだ?」
クラウドの問いに、皇帝は言葉を詰まらせる。さっさと名前を出して貰いたいが、それが出来ないから、皇帝はここまで来たのだ。
「・・・あー・・・・・・・た。そうだ、た・・・・なんとかだ」
「名前を覚えてないのかよ」
「フン、皇帝たる私に名前を覚えてもらおうなど、そもそも図が高いのだ!知らぬ奴は知らん!」
皇帝の言い分は傲慢だが、しかし敵の名前を覚える義理がないというのは、少なからずオカシイ事ではない。
だが、自分の仲間に「た」から始まる仲間はいただろうか?
いや、いない。フリオニールもクラウドも、確かに記憶を辿れば聞いた覚えがある筈なのに、その時は「た」から始まる仲間を連想するに至らなかった。
「他に特徴は?」
「チビで金髪だ」
チビで金髪といえば、コスモス勢には2人いるが、小さくて金髪で、名前に「た」がつくと言えば・・・・
「ジタンか!?」
フリオニールの中で答えに辿り着いた、が。
それと同時に得も言えぬ悪寒が全身を駆け巡った。
ジタンが相手だったら可能性大じゃないかあああああ!!!!
仲間内で、もっとも分かりやすく大好き宣言をしているのは彼である。
普段は仲間であるが、彼はと他の男がちょっとでも良い雰囲気になるのを良しとしていない。
あからさまな妨害をする時もあるのだ。
当のも、そんなジタンを宥めることがあっても邪険には扱わず、むしろ普段は楽しそうに接しているので、恋人同士であってもおかしくはない。
何故、今まで気付かなかったのか。
「・・・・オイ、虫けら?どうした、誰か分かったのなら、そのジタンとかいう奴の事を教えろ」
「(・・・・分かりやすい)」
フリオニールの表情が一変したので、皇帝は怪訝に思うも、フリオニールに詰め寄る。
クラウドはフリオニールの想いを知っているので、あーあと思いつつ彼を見ないよう目線を逸らした。
フリオニールのブレイブは、残り少ない。
「ジ、ジタンは俺達の仲間だ・・・・・それ以上でもそれ以下でもない」
「いやそんな事が聞きたい訳ではない。何をしている奴なのだ?付き合いは長いのか?」
「あぁ・・・」
皇帝の問いに、フリオニールは2人と出会った頃の事を思い出す。
初めて会った時から、ジタンとは既に仲良しそうに喋っていた。
「付き合いは・・・俺よりも長くて・・・・・」
盗賊のジタンは、よくこんな事を言っていた。
「『オレに盗めないモノは何もない』」
フリオニールは薄ら笑いを浮かべながら、皇帝よりも先、遠い遠い次元の天井を見ていた。
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あとがき
長くなりそうなので分けます。
ちょっと無理やり感がありますが、人は恋をすると勘違いも多くなるのでっていう。
ちなみに皇帝はたまにヒロインをストーキングしてます。
カオス軍の誰かに相談しても分かる訳ないし邪険にされると判断したので、フリオニールの元へ行ったと思われる。
皇帝が正確に名前を覚えているのは、フリオニールとぐらい。
あとは光の戦士やアホの子なんかが印象に残ってるぐらいで、他のコスモス勢は虫がいっぱいぐらいにしか分かってないです。
更新日:2011/07/02