Those who think about you dear 2





「もうこれ以上答える義理はないだろう」
「は?」

クラウドは剣を構えると、近距離から容赦なく、皇帝に凶斬りを叩きつけた。
皇帝は悪役らしく捨て台詞を吐きながら華麗にぶっ飛ぶ。

「うぼぁー!く、そ、を必ずや我が手にー」

残りHPが少なかった為、楽勝であった。
皇帝は違う次元に消えたが、確実にまだ諦めていない事を考えると、面倒事が起こる事間違いない。
我ながらめんどくさい事に関わってしまった気がするとクラウドは思うが、考えるより先に手が出てしまったのだ、仕方ない。
クラウドは剣をしまうとフリオニールの前に立った。

「フリオニール、帰るぞ」

上空を見上げたまま反応がないので、フリオニールの眼前で手を振ってみる。
それでも変わらず、押しても引いてもビクともしそうになかったので、クラウドは仕方なく、フリオニールの腹目掛けて拳を捻り込ませた。

「ぐふぅっ!?」

口から泡を噴きながらぐったり気絶するフリオニールを抱え上げ、そそくさとクラウドは元来た道を戻っていった。



*************



仲間のいる宿営地に戻っても、フリオニールは相変わらず魂が抜けていた。
とりあえずクラウドによって自室のベッドへ運ばれたが、その後誰かに声を掛けられても、夕飯に呼ばれても、ボーっとしたまま上の空。
気付けばすっかり夜になっていた。
辺りが暗くなっても、頭にあるのは1つの事柄である。

・・・とジタンは、いつから恋人同士だったのだろうか
何故気付けなかったのだろうか
でもお似合いのカップルだよなジタン良い男だし
ジタンなら、を幸せに出来るんだろうな
おめでたい事だよな

そこまで考えて、フリオニールはガクッとうなだれる。
口を開けても溜め息しか出て来ない。

あぁ・・・何やってんだろ・・・俺・・・

負のオーラが完全に彼を包み込んでいた。



コンコン
「!?」

不意に扉をノックする音が聞こえた。
今自分はとても不甲斐ない顔をしてるのだろうと思うと、フリオニールは仲間に会うのに気が引けるが、訪問者はフリオニールの返事を待つことなく扉を開けた。

「フリオニール、頼みがある」

そこにいたのはクラウドだった。
彼はいつも通りの無表情で、淡々と用件を伝える。

「今日の見張り当番代わってくれないか?・・・夕飯作ったの俺だし」
「あ、あぁ・・・分かった」

食事当番であったフリオニールが時間も忘れて部屋に篭もってしまった為に、クラウドが代わりにみんなの夕飯を作ってくれたらしい。
フリオニールに断る理由はないので、乗り気でないものの、直ぐに承知した。
フリオニールは礼を述べると、簡単に身支度をし部屋を出た。

「・・・・・・・・・さて」

クラウドはフリオニールを見送ってから、廊下を進み更に奥の部屋へと向かった。






建物から出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。
静かな空間は平和を思わせるが、いつ何時奇襲があるかも分からない為、見張り当番は重要な責務である。
補給物資は出し惜しみなく揃えてくれるコスモスだが、自分達の身は自分達で守らなければならない。
フリオニールが2、3歩進んだところで、入り口から程近い場所で焚き火をしているジタンが視界に入る。
フリオニールはドキッとする。まだ話を聞いてから、ジタンとには会っていなかった。
焚き火をしているということは、ジタンも見張り番。よりにもよって、ジタンと一緒。どんな顔をすれば良いのやら。
フリオニールの気など知らずに、ジタンは彼に気付くと無邪気に「よっ!」と一声掛けてきた。

「調子悪いって聞いたけど、大丈夫か〜?」
「あ、あぁ・・・・今は大丈夫だ」
「そっか、なら良いけど」

ジタンは口を閉じると、側にあった枝を火の中に放り込んだ。
パチパチと枝の燻る音だけが耳に入ってくる。
今この場には自分とジタンの2人しかいない。
フリオニールにとって、この沈黙と空気は、通常の何倍か計り知れない程重いものに感じられた。
フリオニールの頭の中には一つの事柄しかない。

これは、真相を聞くチャンスなのか―――
フリオニールは勇気を振り絞った。

「ジタン・・・・あのさ、聞きたい事があるんだけど」



********



「はぁー気持ちよかった!」

は肩にタオルをかけ、ほっこり上機嫌。風呂上がりで自室に戻ってきた。
運の良い時は、お風呂付の宿営地になる。
部屋もあるし、コスモス様々だ。
髪は濡れたまま、ベッドに腰掛ける。
自然乾燥させている間に武器の手入れだ。

「♪ふっふふふんふふん〜・・・・・ん゛!んん!?

鼻歌を歌っていたのに、突如音にならなくなった。
ついでに手の動きも、首も、全身が動かない。
この術は以前―――

!私は認めん!今すぐ私のものとなるのだ!!」
「んんん!?」

しまった、と気付いてからでは遅かった。
まんまとコスモス軍の宿営地内に忍び込んだ皇帝が、の目の前にいる。
何故、どうやって侵入した!?しかもこの術はトラップ型の筈、いつ仕組んだというの!?
疑問が頭の中を駆け巡っても、確かめることも何も出来ない。

「んん!んんんん!?」
「声を聴けないのは残念だが、騒がれては面倒なのでな。何、直ぐ終わる」

皇帝はをベッドの上に組み敷くと、衣服の割れ目から太ももに手を這わせた。
内股に沿って、徐々に位置を上げていく。
もう片方の手は、上半身を服の上から弄る。

「んー!」

何の抵抗も出来ず、悲鳴にもならない。
体は動かない癖に感触は敏感で、徐々に核心部に近付く生温かいモノに恐怖と焦りが入り交じってくる。
こんなところで、屈辱的である。
嫌だ、こんな―――

「んんんんー!!」

が力いっぱい全身で拒んだ時だった。

「終わりだ」
「!?」

ガッ  パリーン

強い衝撃音と共に、勢い良く窓が割れる音。
皇帝は吹き飛ばされ、代わりにの目の前に立っていたのは、クラウドだった。

「やはりな。来ると思った」
「クラウド!?」

皇帝がダメージを受けた為だろう、に掛かっていた術が解け、口が動き言葉となった。体も動く。
クラウドはを振り向くことなく、飄々とした態度で皇帝を見る。窓の外の皇帝は、かなり悔しそうだ。

「おのれぇ、貴様あの時の――」
「何の騒ぎだ!!!」
「皇帝!?」
「くっ、虫けらがゾロゾロと・・・!」

あくまでここはコスモス陣地。
騒ぎを聞きつけてWOLとオニオンが走ってくる。
普通に戦おうとしては皇帝に分が悪い。
直ぐにテレポで逃げようとするが、消える直前に、走ってくるのがあの憎き小僧だと気付き、指差して叫ぶ。

「ジタン!貴様からを奪い取ってやるからなぁあああ」
「は?」


殆どの者に疑問を与えてから、皇帝は闇と共に消えた。

、大丈夫か?」
「ええっと・・・クラウドのおかげで、なんとか」

消えた皇帝の事など念頭にないWOLは、直ぐにの安全を確かめる。
へにゃっと笑うであるが、彼女自身無事であっても、その服は乱れている。
WOLはから離れると、剣を引き抜き歩き出した。

「一体見張り番は何をやっていたんだ・・・!」

表情は変わってない筈なのに、並々ならぬ怒りのオーラを纏うWOL。
は慌てて追い掛ける。

「ちょ、WOLさん待って!私もトラップ気付かなかったし・・・ま、待ってー!」

見張り番の2人に死亡フラグが立つ中、取り残されたクラウドとオニオンは日常に戻ったと思い気が抜けた。

「・・・寝込み襲われた割には大丈夫そうだね」
「あぁ」

そして先程の疑問が再び湧き上がる。

「・・・ところで、僕の聞き間違いじゃなければ、さっきの皇帝、僕のことジタンって呼んでたよね?」
「あぁ」
「しかも僕からを奪うって・・・・何?人違い?」
「さぁな」
「っていうかってジタンの物な訳?今朝全否定してたけど」
「・・・・・・そうなのか?」
「そう、みんなが嘘ばっか言うからさ、挙げ句の果てが僕にまで言い出したよ」
「・・・・・・何を?」
「"好き"だって。ま、仲間としては光栄だけど」
「・・・・・・・・・・・」

クラウドは、これまでの経緯を思い出しながら考えた。
皇帝は言った、がその相手に面と向かって好きと言ったと。
名前は分からないが、チビで、金髪で・・・・・・

「・・・・・たまちゃん」
「は!?クラウド、何急に!?クラウドにたまちゃんなんて呼ばれたくないんだけど!」

たまねぎ剣士の言葉など左から右に受け流し、クラウドは遠い夜空を見つめる。


「(なんだ、そういう事か)」


少し離れた所から、眩い光と岩の破壊音、それに呼応するように悲鳴が聞こえてくる。
クラウドは窓から部屋の中へと入り、そのまま自室へと帰った。





END





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あとがき

最近下ネタなかったなぁ・・・・と思い、ちょっとだけ←
私的にこの話は前半がフリオニール夢で後半クラウド夢です。
いつの間にか私のクラウドへの見方が変わった。
何だろう、バッツとはまた違う、悪友的な?
ヒロインにケチつける数少ない人ということで。

なかなか強引なところもちょいちょいあったかと思いますが、楽しんで頂けたら幸いです!
1つ補足するなら、皇帝はしょっちゅうコスモス陣営覗きに行ってます。
今回の部屋に罠を張れたのも、決死の努力ですね☆ ←


更新日:2011/07/24