となりのクラウドくん





クラウドの影が薄い?
そんなことはない。
今日はに密着してもらって、クラウドの生態を追ってみよう。

朝、彼はチョコボの鳴く声で起床する。
しかし秩序の聖域にはチョコボがいないので、大抵バッツの物真似か、仲間が頑張って起こす。
ちなみにはコスモス1の寝坊助なので、クラウドを起こす係になったことがない。
試しに2人を同じテントで寝かせると、こうなる。

「クェーッ!」
ガバッ
バッツがチョコボの声真似をすると、クラウドが反応良く起き上がる。
誰だって近くで大きな声を出されたら飛び起きる気はするが、クラウドが気持ち良く目を覚ますのはチョコボの声なのだ。

、朝だ」
「んん〜」

クラウドが隣で寝ているを揺する。
は眉間に皺を寄せるだけで、なかなか目覚めようとしないが、危機感知能力はあるため、バッツの言葉には直ぐ反応する。

「乳揉むぞ〜」
「ふざけんな」

ボーっとした頭でのそりと起き上がれば、クラウドがさり気なくの前髪を直し整えてくれる。
結論、2人にはバッツが必要だった。




「じゃあ今日も気をつけて。無茶はしないこと」
「はーい」

朝食後、セシルに見送られペアを組んで散策に出掛けた2人は、アルティミシア城でふと立ち止まる。
クラウドがジーッと中央にある螺旋を見つめているのである。

「どうしたの?」
「少し寄り道して良いか?」

こくんとが頷けば、クラウドはおもむろに螺旋の一番高い場所の端(滑走路)の上に移動した。
そして何をするかと思ったら、ザーッと器用に滑り降りて行ったのである。
スノボーが趣味のクラウドです。
久しぶりにスノボー感覚の滑りが出来て、ちょっとご満悦のクラウドであった。
クラウドの口癖は興味ないね、と言われているが、彼は多趣味である。
バイクも好きだしスノボー、チョコボの育成&レース、と体を動かすのが好きだし、ゲーマーでもあるので1日中ゴールドソーサーという名の遊園地に1人ほっといても、勝手に遊んで楽しんでいる。
もちろんディシディア界にそんなものないので、誰もそのことは知らず、クラウドも語ったりしないのだが、そんなことで彼はちょいちょいさり気なく遊んでいる。




みんなの元へ戻ると、何やら揉め事が起こっているようで騒がしくなっていた。

「絶対スコールが悪いっス!オレだって傷付くんだからな!」
「(次俺の分もやるから)・・・・別に良いだろう」

どうやら喧嘩しているのはスコールとティーダで、普段直ぐに仲裁してくれるWOLやセシル、フリオニールは出掛けていていないらしい。
そうなると、次に頼られるのは普通ならクラウドである・・・・・が。
クラウドは2人の喧嘩を気にも止めずさっさとテントの中へ入ってしまった。
そそくさとはジタンに近寄って事情を聞く。

「どしたの?」
「オレも最初から居たわけじゃないから分かんないけど、なんかスコールがやっちゃったっぽいよ」

ティーダが傷付くなんて、珍しい。
悪い意味ではなく、彼は太陽みたいに明るい子なので、多少の嫌味は受け流すのだ(分かってないとも言う)

「まーまー2人共。些細なことは水に流そうじゃないかー」
「バッツは黙ってろ」

試しにバッツが仲裁してみても、ふざけた彼では効き目がない。
まぁ本当に大したことではないと思うが、一応結託していかないとカオス勢とも戦えないので、こういう喧嘩はサッサと解決すべきだ。
ここでとジタンがお互い押さえてちゃんと話し合いを設ければ丸く収まるのだろうが、それでは今回の話と逸れてしまうので宜しくない。
はその場をジタンに任せつつ、テントの中のクラウドを引っ張り出そうとした。

「クラウド!2人を止めてよ」
「その内なんとかなるだろ」

背中を向けて座っているクラウドは、そう一言呟いただけで振り向きもしない。
何かに集中しているようである。そんなに大事なことなのか。
がひょっこり後ろから覗き込むと、彼は、あろうことかピコピコと器械のようなもので遊んでいた。

「・・・・・・・何それ」
「DSFだ」
「でぃーえすえふ?」
「ディシディアスタートファンタジー」

だからそれは何なんだ。
には意味不明としか言いようがないその物体は、兎に角2人の喧嘩よりもクラウドにとっては興味があるものらしく、が彼の腕を引っ張っても頑なに動こうとしない。

「ちょおおおそんなのは後でも出来るでしょ!」
「待て、今良いとこなんだ」
「あっちは悪いとこぉおお!」

画面を見ると紫色の長い髪の中性的な人物が、黒く厳つい片腕銃つけたオッサンを殴っていた。
えっ、何これ動いてすっごーい!と何もなければ感動したいが、それどころじゃない。
暫く攻防を続けていたら、外から声が聞こえた。

「輝け!」

あ、ライトさんが帰ってきたな。



こうして、結局他の誰かがやってくれるので、クラウドはあまり動かず目立たない。
もちろんやるべき時はやるだろうが、それは役割分担されたものであったり、本当に必要だと思う時。
たぶんカオスが10人でなんとかなるなら、クラウドは家でお留守番してるだろう。そんな感じ。

「ねぇクラウド、風呂焚きは」
「やった」
「夜の見回りは」
「今日はフリオニールだ」
「・・・・・・・・・で、何やってるの?」
「DSF」

ハマってしまえば、空いてる時間にずっとやってるオタクである。
そんなクラウドでも、宿命の相手と対峙する時は本気である。
別の日、再びと2人で約束の地を歩いていたら、英雄が現れ戦闘態勢に入った。

「クックックッ、絶望を贈ろうか」
「いらない」

しかしクラウドは即答すると、の両手をとって右手で持ちポンと左手をその上に乗せた。
何だこの動作は。何かを渡した・・・?
不思議に思っていると、彼ははっきりくっきり真面目に言った。

「飽きた。バトンタッチ」
「へ?」
「セフィロスをにあげる」

クラウドは本気だった。
本気で英雄をに押し付けようとしていた。
そんなの、はもちろんセフィロスも黙ってない。

「いや、私もいらないから」
「クラウド、お前は私の人形だ!私がいないとダメだろう!?」
「もうそういう設定良いから。そこらに捨てたから」

捨てたってお前。
2人がどういう関係か知らないけど、そう割り切れるものなのか。
ほら、あからさまにセフィロスがショック受けてるよ。
それでもクラウドはそそくさと帰ろうとする。

「じゃ、後よろしく」
「こら待て放棄すんなぁああ!」
「やだぁあクラウド、追いかけっこしよーよ!私の胸に飛び込んでこいよぉおお!」

ショックどころかキャラ崩壊して涙目なセフィロスを、私にどうにか出来る訳ないだろう。
絶対ここでクラウドを逃がしてはダメだ、と直感で悟ったは、既に全力疾走で逃げているクラウドを同じく全力疾走で追う。
セフィロスも武器振り回しながら追いかけてくるので超危険。
おまっ、ちょっとは気遣えよ!平然と仲間を売るなぁああ!
約束の地の次元を越えパンデモニウム内に入ったが、まだ走る。
すると突然クラウドが止まって振り返った。

「えっ!?」

まさか止まると思わず、勢いのまま激突しかけたのではジャンプしてクラウドを飛び越える。
すると次いで武器を振り回して突進してくるセフィロスを、クラウドはガードをして弾いた。

カキンッ
「あれ?」

弾いた拍子にざっくり刀が壁に刺さる。
狭く入り組んだパンデモニウム内、セフィロスの武器は長すぎて不利だ。
隙が出来たセフィロスに、容赦なくクラウドはブレイバーを決め込んで、EXバーストも発動した。

「・・・・・・・・・」

はその光景を唖然として見ていた。
まさか、計算で、わざとここにおびき寄せて?
いやいやクラウドがそんなことするのか、アホじゃないから出来るのかもしれないが、だとするとセフィロスが凄く哀れなのだが。
ちゃちゃちゃーちゃーちゃーちゃっちゃちゃー
勝利BGMが流れて、クラウドは何事もなかったかのようにの元に戻ると、帰ろうと促した。

「・・・・・全部計算?」
「いや、本当にもうめんどいから、次はが戦ってくれ」
「あ、そう」

では何を思って反撃したのか、謎であるが、クラウドはWOLの次に思考が謎で読めない人なので、追及しても仕方ないだろう。

そんなクラウドは、今日も周りに上手く溶け込み、何もせずボーっと立っている。






END





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あとがき

うん・・・・・・なんだろうね。
ゲーム内では何でも理由を求めてたクラウドだけど、私が書く頃には、それももう疲れ切ったので自分に素直に生き・・・
ってどこのライトさん?と聞きたい気もするけど、でも完全に根底が違う2人なのでボーッとするにしても違います。
ただのキャラ紹介話なので雰囲気だけでも感じ取ってもらえればと。

でも自分で書いといてなんですが、このクラウドだったら結構好きです。
クラウドが今後逆ハーに参加するかは不明です。ちょっと厳しいかな?いやでもたまには頑張ってもらおう^^




更新日:2009/07/20