ステータス異常にご注意を
「こっちは片付きましたよー・・・・・・ってアレ?」
は近くにいた最後のイミテーションを倒すと、周囲に声をかけた、が、一緒にいた筈のWOLがいない。
基本的に1人は危ないからコンビを組んで(よくよく例外は起こるが)敵地に入る訳だが、大体戦闘は1対1で行うし、みんなかなり動き回って戦うので、自然と場所が離れたりしてしまう。
コンビを組む意味ないよなーと思うが、まぁ捜せば見つかる距離にいる筈だから、気にしちゃ負けなんだろう。
はポンポンと服を払って動こうとした。
しかし、思うように体が動かない。
というか、完全に身動きが取れず、片腕を上げて払っている体勢のまま固まってしまっている。
・・・・・・・・アレ?これは・・・・・・
顔だけ動くらしい、瞳を瞬いたり口を動かすことは出来るが、明らかに敵の術にかかってしまっているようで嫌な予感しかしない。
このような小賢しい、トラップ系の魔法を使うのはカオスの中でも限られている。
そして予想通り、どこからともなく姿を現したのは薄ら寒い笑みを浮かべる皇帝だった。
「無様な恰好だな、」
魔法が成功してさぞ嬉しいのだろう。
普段なら接近戦タイプのにそう簡単には近づいてこないが、今は違う。
余裕綽々で一歩一歩に近づいてくる。
それに対し、はあからさまに嫌な顔をして抵抗した。
「そう思うなら術解いてくれないかな」
「フン、誰に向かって物を言っている」
「後ろから襲いかかってきたも同然の人に」
「・・・・・相変わらずの減らず口だな」
皇帝が呆れも含んだ蔑んだ瞳を向けてくるが、は全く表情を変えない。
圧倒的に不利な状況だが、媚を売るなどまっぴらご免、弱い部分なんか見せたくないし皇帝なんかに屈するのは嫌だ。
背筋は冷え切って嫌な汗が出てくるが、態度には出さない。
「分かっているのか?今お前は私の支配下にある。私の気持ち1つでお前の運命が変わるぞ」
「そうかな、舌は自由に動くけど」
そう言っては、んべっと舌を出し挑発する。
それでも皇帝の圧倒的有利に変わりないから、奴はの戯言を軽く流す。
だから苦手なんだよ、皇帝。
皇帝はの行動に薄く笑うと、より体を近づけてきた。
「ふ、そうでなくては面白くない。存分に味わわせてもらうぞ」
「え゛っ」
はサーッと顔を青ざめさせる。
皇帝の顔が、とても楽しそう。
舌なめずりなんかして、真っ直ぐこっち見て、その視線に厭らしい色が帯びていて・・・・・・すんごく嫌な予感がした。
「ぎゃー!やだ無理!離れろぉおおお!!」
「私の甘美なる支配を受けるのだ。光栄に思え」
「頼んでない望んでない!本当に勘弁して下さいお願いします」
「今更詫びても遅い」
皇帝は左腕をの腰に回し、右手での頬をやんわりと撫で始めた。
ゾゾゾと背筋に悪寒が走った。
皇帝の指はの前髪を掻きあげ、頬、顎へと滑り掴むと、無理矢理の顔を上げさせる。
皇帝の顔が近い。ダメだ、逃げられない。
思わず瞳をギュッと閉じるの唇に、皇帝のソレが重なった。
「っ・・・・・・!!」
ねっとりと熱く柔らかい感触がの唇を覆う。
啄んでは何度も吸い付き貪られるが、しっかり閉じた唇は頑なに中への進入を許さない。
しかし、思うとおりにいかないものを、そのままにしておく皇帝ではない。
顎に添えていた指をそっと下にずらすと、皇帝はの喉をグッと押した。
「・・・・っあ゛」
途端に締まる喉。苦しくて吐き気がして、反射的には口を開いてしまった。
すかさず皇帝が舌が口内に侵入させる。
自分のものではない、熱いヌメリとした感触に、思わずはビクッと反応する。
「んっ・・・・ふぁ・・・・・んっく」
くちゅくちゅと卑猥な音が脳内に響いてくる。
皇帝のしたいように舌を絡められ犯される。
呼吸もままならずに頭が真っ白になって、羞恥に顔を赤く染め歪めるだけで抵抗出来ない。
ようやく解放された時には、どちらのともつかない唾液が2人を繋いで垂れた。
「(堕ちたな)」
荒く呼吸を繰り返しグッタリしているを見下ろして、皇帝は得も言えぬ快感と悦びを感じる。
を我が支配下に。
体を手にすれば、後は心を体で調教していくのみ。
皇帝がの服を脱がそうと手に掛けた瞬間、一閃の光が2人目掛けて走ってきた。
思わず皇帝が後ろに飛び退き、光の出所に視線を向けると、そこにはWOLがいた。
身体中から溢れ出る殺気に、皇帝は瞳を細めせせら笑う。
「フン、これからというところを・・・・虫ケラに邪魔されるとはな」
「貴様、生きて帰れると思うなよ」
剣の切っ先を向け威嚇してくるWOLに対し、皇帝は魔法で未だに動けないままのを引き寄せ余裕を見せる。
「光の戦士でも女が絡むと逆上するのだな。貴様が動けばこの女がどうなるか、分かっているだろう?」
「走れ光よ」
ちゅどーん
W O L は 容 赦 な く 攻 撃 し た
まさか何の躊躇いもなく攻撃してくるとは思わず、直撃して皇帝はを巻き込んで軽く黒こげになる。
けほっとむせかえりながらは意識を戻すと、体が動けるようになっていることにも気付き、速攻で皇帝に蹴りを入れた。
「うぼぁっ」
皇帝は10メートル程吹っ飛ぶと別次元に落ちていった。
「ぐっ、次こそはヤッてやるぞおぉぉ」
嫌な台詞は聞こえなかったことにする。
相手にすればアッサリ勝てる皇帝だったが、精神的に深手を負ったはその場にへたりと座り込んだ。
ゴシゴシと唇を腕で拭う。あぁもう、最悪。
WOLはに近付くと手を差し伸べた。
「すまない、大丈夫か」
「なんとか。助けてくれてありがとう」
WOLに甘えて手を取り立ち上がる。
本当に完全に1人じゃなくて良かった。
1人だったら最後まで致されてただろう。考えたくもない。
若干焦げてる服と痛みに苦笑するが、こちらの方が百倍マシなので素直に感謝すべきだ。
顔に力が入らなくて、頼りない笑みになってしまうが。
WOLはそんなをギュッと抱きしめた。
突然の行為に、は焦る。
「ら、ライトさん」
「落ち着いたら戻るぞ」
「・・・・・・・・はい」
声は淡々としていて、鎧に押し当てられてるから表情は見えないけど、WOLの優しさを感じた。
今更小刻みに体が震えてきて、2人はしばらくそのままだった。
オマケ
「・・・・」
「はい?」
「もしアイツの名残が気持ち悪いなら、私としておくか?」
「いいい、いえ!大丈夫です!」
天然なのか何なのか、こっちをドキドキさせないで下さいライトさん!
END
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あとがき
皇帝夢、と言って良いものなのか、蹴り飛ばしたりで線引きが難しいところですが。
まさに悪な人なので、良く知らないもののずっと書いてみたかったキャラです。
口調にとっても自信がないんですが。それからやたら難しい言葉・言い回し?を使ってるイメージもあったりで
アホな私には難しいキャラだけど、でも書いてて楽しかったです。いやらしいわー皇帝。
ちなみにWOLさんは、私の中でかなりフリーダムな人になりつつあります(笑)
更新日:2009/05/31