光の戦士の些細な戯れ
時々、なんてことないかのようにやってくるから、こちらはビクビクものだ。
きっかけは私が転んだのか、WOLが転んだのか。
いやWOLが転んだからこんな体勢になっているとしか考えられないが、WOLが転ぶなんて想像つかないから自分がやったのかと錯覚する。
WOLはを巻き込んで倒れた。
WOLに悪気はないしそれぐらいで怒りはしないが、その体勢と全く表情を変えないWOLにたじろぐ。
あの・・・・これって、端から見たらWOLが私を組み敷いてるよね。
しかもWOLは硬直してる訳でもなく動かない。
「・・・・・・・どいてくれます?」
が口にしてもWOLは無表情のままである。
何か思考を巡らせているんだろうが、それが全く読めないからある意味恐い。
そして、表情はブレないが脳内がブレまくってる発言をし出した。
「このまま1回やっておこうか」
「え゛っ、意味が分からないんですけど」
「そのままの意味だ」
「いや理解したくなかったのもありますけど、この状況でどうしてそういう話になるのか、です」
「やりたくなったから」
倒れ込んでからここまで、全く表情を変えないのは流石ライトさんと思うが、そーいうことまで何事もないかのように言わないで欲しい。
冗談に聞こえないー!!
は顔の両脇に置かれている腕を力を込めて押しながら慌てた。
「あのライトさん、落ち着いて下さい」
グググッ
「私は常に落ち着いている」
グググッ
「思考を落ち着かせて下さい」
この間もはずっとWOLの腕を押していた訳だが全く動く気配がない。
いくら男女の差があるといえど、普段はこの拳で敵を倒している。もちろん鍛えているからそこら辺の男に力で負けるつもりはない。
それでもビクともしないのは流石ライトさん。武人としてはマジで尊敬します。
一応変わらず抵抗をしつつ、はジッとWOLを見てこの状況のおかしさを説いた。
「まずここは敵が出るかもしれない場所です。気配はないけど、絶対安全とは言えないし、間違ってもやるやらないという話をする場所じゃない」
「・・・・・・・」
「それにこれはただ転んだだけであって、やっぱりやるやらないには結びつません」
「・・・・・・・」
「というか今ここでライトさんとやる気はまーーったく!!!ないです」
「・・・・・・・・話は終わりか?」
そう言ってWOLはの服を脱がそうと手を伸ばした。
人の話聞いてましたかぁあああ!?
渾身の力を込めてはWOLの手を抑える。
あまりの力の入りように手が震えるんですけど。ヒロインに有るまじき血管なんか浮き出てるんですけど、ねぇ!!
底力によってなんとか均衡を保っているが、体力的にもWOLの方が有利に変わりないだろう。
何とか実力行使に(既になってはいるが)入る前にWOLを退かせなければ!
そこでは今の状況で一番出やすいものをポロリと瞳から零した。
「ほ、本当にやめてください・・・・っ」
乙女の武器、涙☆(キラリーン)
涙が出た理由は主に筋肉の悲鳴だが、ここは恐怖とかそういうのも関わってということにしておこう。
嫌がる女の子を無理やりという構図は、絶対正義じゃないぞ!クリスタルも光り輝いてくれないぞ!
勝ったという表情が出ないよう必死に顔を作りつつ、がジッとWOLを見ていると、同じくをジッと見ていたWOLは小さく呟いた。
「・・・・・・たまには良いかも」
ちょっと待てぇええええええ!!!!
は再び顔を引き攣らせ全力で抵抗した。
WOLからかなりの問題発言が出た気がする。たまにはってちょっと。たまにも何もそういう関係になった事は1度もないですけどね。
それとも何ですか。悪役側に回るのがたまには良いんですか。ライトさんを信じてる子供が泣いちゃいますよー!
この場合、涙によって奥底にあるWOLの嗜虐性をくすぐった訳だが、そんなことには気づいていない。
はどういう行為が男の欲情をそそるのか、学習すべきだ。
さっきよりもWOLの力が増して、はいよいよ本気で成す術がなくなってきた。
そもそも普段から普通に戦ったって勝てる気がせず、防ぐには説得しかなかったのだが、それも失敗した今となってはどうしようもない。
WOLの顔が近付いてくる。
「っ!」
思わずは目を瞑って身を縮ませた、が。
ザクッ
妙な音と共にWOLの動きが止まった。
恐る恐るが目を開くと、相変わらず無表情の端正な顔が近くにあったが、何か変だ。
そのまま顎を上向けにし後方を見ると、WOLの兜の角が地面に突き刺さっていた。
フル装備のまま行為を行おうとするのが間違いだった。
「「・・・・・・・・・・」」
妙な沈黙が辺りを包む。WOLはショックを受けているんじゃなかろうか。
そして気分が削がれている。きっと。逃げ出すなら今!!
「ぐっ」
は両足を引いて曲げると、WOLの腹目掛けて思い切り蹴り上げた。
油断していたWOLはアッサリとの上から放れ、ダメージを喰らっている。
は直ぐ立ち上がると、WOLに指を突きつける。
「次こーいう事やったらライトさんでも許しませんからね!」
そして走り去った。
本当に、ライトさんは性質が悪い。
こうやって本性見せたかと思ったら、次にはいつも通りのブレない彼に戻っているし。
かと思って安心した頃に、また本性見せて迫ってくるし。
ある意味天然なのかもしれない。甘い言葉を吐く訳でもなく、表情は変わらないのだから。
だから、余計ドキドキするんですけどね!!
本当に、ライトさんは性質が悪い。
そして本気で怒れる自信がない私も、性質が悪い。
END
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あとがき
えーっと純粋にWOLさん好きな方ごめんなさい。
私もWOLさん大好きですよ!だけど彼はムッツリスケベだと思うんだ!(殴)
いや、スケベっつーか、そこはまぁ男の人だし、そういう部分があっても良いかなと思うのでこうなった。
私の中でWOLさんの表情は最初から最後まで全く変わってないです。
ダメージ受けた時だけちょっと目瞑るぐらいな。見た目は全くブレないWOLさんです。
更新日:2009/05/03