実践しましょう
「ティナGO!」
「うんっ」
目標物を発見し、バッツはティナに号令を送る。
それに合わせティナはタタタタと走って、フリオニールに飛び付いた。
「うおっ、ティナ、どうした?」
「ううん、何でもない」
ニコっと笑ってティナは何事もなかったようにフリオニールに別れを告げると、バッツの元へ戻ってきた。
フリオニールにとっては意味不明な行動だったが、バッツとティナは確実な手応えを得る。
「やっぱ成果出てるみたいだな!」
「いつもと変わらなかったよ」
ティナは嬉しそうに微笑んだ。
それを側で見ていたオニオンは首を傾げる。
「ティナは何をやったの?」
「ふふ、あのね、フリオニールが私にも慣れてきてくれたの」
「前に言っただろー?によるフリオニール改造計画!
前ならティナが触りでもしたら顔赤くして挙動不審になったのに、それが平気になったんだ」
「へぇー」
それをわざわざティナで試させるなよ、とオニオンは心の中で毒づくも、ティナがいる手前笑顔を見せておく。
ふとフリオニールの方を見ると、今度はが話しかけているところだった。
すると、少ししてからボンっとフリオニールから湯気が出ているのが見えた。
は全く触れてないのに。
何を言われたのかは分からないが、確かにフリオニールは挙動不審になっていた。
「・・・・・直ったんじゃなかったの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・アレ?」
********
「では、幾分かマシになったが、だけはまだ慣れないと」
「・・・・・・・・・・あぁ」
フリオニールは頭を抱える。
何でこんなことになっているんだろう、まさかのを除くコスモスメンバーで会議が開かれていた。
それも自分の事について。
議長のWOLが淡々と話を進めていく。
「といるとどういう気持ちになるんだ?」
「いや、よく分からないが・・・・胸が苦しくなったり、まともに顔を見てられないんだ」
その言葉で勘の良い者はハッと気付く。
フリオニール、に恋してるぅうう!?
ジタンは直ぐにその可能性を否定した。
「いや、具合が悪くなるだけだよ!タイミング悪く!」
「そうするとはとんだ疫病神になるぞ」
冷ややかなツッコミをするスコールをジタンは睨む。
ジタンはが大好きだ。普通に仲間としてだけではなく、特別な思いを抱いている。
よってフリオニールがその気持ちに気付くのは絶対阻止したい。
ただでさえ無自覚バッツという強敵がいるのだ、これ以上ライバルが増えるのはごめんである。
ちなみにWOLがにちょっかい掛けてるのは大抵2人きりの時なので、ジタンは気付いていない。
「でも、俺ほんとに病気なのか?のおかげで成長してると思うのに」
「・・・・・・・・」
セシルやクラウド、オニオンは鈍感すぎるフリオニールに掛ける言葉がない。
ハッキリ教えてしまうのがフリオニールの為になる訳だが、そうするとジタンに一生恨まれることになりそう。
そっちの方がきつい。
本気で悩み出したフリオニールに、ティナは天然故のトドメをさす。
「病気だったら、に近寄れなくなっちゃうね」
「えっそれは・・・・」
嫌だ。絶対嫌だ。
大切な仲間を避けねばならないなんて、おかしい。
なんとなく重くなる空気に、ティーダは勢い良く立ち上がるとフリオニールに歩み寄った。
そしてポーションを差し出す。
「もっかい試してみれば良いっス!ほんとにからダメージを喰らうのか検証するっス!!」
おおおティーダが良いこと言った!
まるでがフリオニールを攻撃しているかのような言い方をしたが、この際問題ない。
フリオニールは勇気をもらって、立ち上がった。
「分かった、行ってくる!」
そしてものすごい勢いで部屋を出た。
**************
「よっしゃー!うーん今日は調子が良いな〜アイテムも良いな〜♪」
♪テテテテーテッレーテッテレー
BGMを流しながら、は今し方倒した敵が落としたアイテムを拾った。
基本単独行動は良くないとされているが、今日は何故かバッツに1人でのアイテム探しを薦められた。
バッツに言われると何か裏がありそうな気がするが、何も考えてないことも多々あるし大した事でないことも多々あるので、気にしない。
むしろ、己の力を過信する訳ではないが、1人で戦う方が楽な時も、時にはある。
今がまさにその時。秩序の声域に程近い次元の敵は、大体余裕で勝てる敵である。
「!!!」
「・・・!フリオニール、どうしたの?」
呼ばれて振り向けば、息を切らしたフリオニールが側まで走ってきた。
「あっ、いや、その、大した用がある訳ではないんだが・・・」
呼吸を整えながらも、しどろもどろなフリオニールには?を頭に浮かべる。
フリオニールはとにかくを探すことに精一杯で、その理由を考えることを忘れていた。
「えーっと・・・・あっ、アイテムは取れたか?」
が左手に戦利品であろう物を手にしているのを見て、フリオニールは咄嗟に理由を作った。
すると不思議そうな顔をしていたの表情が、パァッと明るくなり、フリオニールは(えっ?)と思わず身を引いた。
これは、ヤバイ、予感がする。
嬉しさの余りの、自己防衛本能だった。
「取れた!!見てみて、ここらにしては価値の高いアイテムがこんなに!」
側に置いておいたアイテム袋を開き、とてもとてもとても嬉しそうな満面の笑みでは答えた。
め っ ち ゃ 可 愛 い
ズキュンッ
フリオニールは心臓にグングニルを刺された。ような気がした。
衝撃に耐えられず、心臓がバクバクと波打っている。痛くはないけど、正常じゃない。熱い!
ドキドキドキドキドキドキドキドキ
こ、これは病気なのだろうか、分からない、分からないし、俺は、俺は・・・・
「あっ、フリオニールには特別にコレをあげよう!」
フリオニールが心の中で葛藤しながら固まっている内に、は楽しそうに袋の中からアイテムを取り出した。
出てきたのは、天使のブローチ。
ニコニコ笑顔で差し出す。その笑顔が、光り輝いていた。
貴 女 が 天 使 で す
フリオニールの思考は最早パニック状態になっていた。
「え、いや、それはが似合う!が持ってた方が絶対良い!むしろ装備して!」
「はい?そ、そうかな?いらない?」
「あっ!!!欲し・・・・・・・いいや、それはやっぱりの方が・・・・」
混乱の余り一度断ったが、よくよく考えればせっかくからプレゼントとして貰えるチャンスだった。
一瞬で寂しい気持ちになったが、何度見てもこのアイテムはに是非装備してもらいたい。めっちゃ可愛いんだもん!
でも欲しい苦しい。あぁコレはまさしく″苦しさ″だ。ダメージなのか!?
「ぐぁあああああ!」
「!?」
急に頭を抱えて唸りだしたフリオニールに、は思わずビクッと身を引く。
いきなりどうしちゃったのだろうこの子は。
「フ、フリオニール?どうしたの?具合悪い?」
「はっ!ちちち違うんだこれは!そんなんじゃないんだ!」
泥沼に嵌って行くのが自分でも分かったが、どうして良いのか分からなくフリオニールはいっぱいいっぱいになっていた。
考えれば考えるほど分からなくなる。
苦しさと羞恥と熱さと緊張と、どうすればこのぐっちゃぐちゃの状態から抜け出せるのか。
―――――はっ、ポーション!!
ティーダから受け取っていたポーションを思い出し、慌ててそれを取り出し一気に飲み干す。
「・・・・・・・・フリオニール?」
「んっくんっ・・・・ぶっほぉあ!!!」
勢い良く飲みすぎたせいで咽返り、余計に苦しくなった。
ポーションの効能は少し喉が潤うだけだった。
もうっ、嫌だ―――
涙目になりかけたフリオニールだったが、天使は天使でいてくれた。
「何してんの、もう」
「っ!?」
はどこからかサッと布を取り出すと、フリオニールに隙を与えることなく近付き顔を優しく拭った。
思わずフリオニールは固まるが、苦しさはいつの間にかどこかに小さくなって消えていた。
の匂いがする。が下から自分の顔を覗き込んでいた。
「何で慌ててたのか分からないけど、とりあえず落ち着いて。はい、吸ってー吐いてー深呼吸」
言われた通り、ここに来て初めてまともに呼吸するんじゃないかと思うぐらい、フリオニールはゆっくり息を吸って吐いた。
「ここ座って。もー服まで汚しちゃって・・・・フリオニールはパニックにならなければイイ男なんだから、まず落ち着くようにね」
「・・・・・・・・・はい」
が丁寧に首周りのマントを外し、綺麗にポーションを拭き取った後、衣服を整えてくれる。
羞恥と熱さと緊張はまだ解けないが、それでも落ち着きを取り戻し逆に心地良いものへと変わっていた。
温かく、気持ちが良い・・・・・・
たとえからダメージを受けようと、そのダメージは同じによって癒される。
病気か、何か、自分には分からないが。
「・・・・・・・・」
「なに?」
「・・・ありがとう」
これからも変わらず、の側にいられればな、と思うフリオニールであった。
END
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あとがき
誰かにツッコミさせようかと思いましたが、やめました。
代わりに自分で言います。
ヒロインは天使ではなく、お母さんです
フリオニールは、たとえ好きな子と付き合うことになろうと、初心な反応のままで居て欲しい。
たとえ好きな子と結婚しようと、新婚な頃はまだまだ初心な反応のままで居て欲しい。
結婚して1年が過ぎようとする辺りで、余裕が出てきてたまに反撃とかも出来るようになって欲しい。
妄想ほくほくです。
更新日:2011/06/25