ささやかな









フリオニールは、愛しき人に想いを伝えようと、相手の眼前に立ちはだかった。

・・・・・その、あの、すっ」

心臓が大きく鼓動する。
身体中を巡る血が体温を上昇させ、汗がにじみ出た。
熱い。全てが、熱い。
頭の中など真っ白で、自分が何を喋ってるか、何を言いたいのか理解していない。
ひたすら何か言わなきゃ、何か伝えなきゃと焦りを感じる。
その結果、捻ることなく、単刀直入に言った。

「すすす好きです!一緒になって下さい!」
「良いよー」

フリオニールの目が点になった。
彼女は、かなりあっさり了承した。







告白した時のことを、フリオニールは良く覚えていない。
何故だか記憶が曖昧で、告白後のことなんかすっぽり抜け落ちて、次の日を迎えている。
あまりの興奮に脳がついていけなくて、返事を貰って直ぐに自分は倒れでもしたのだろうか。
そういえば心配そうに自分を覗き込む彼女を見たような、それは一昨日だったような・・・・・・あれ、今はいつだ?
そんな混乱状態のせいか、告白時のシチュエーション、何と言ったのか等、甘く淡い思い出が欠けてしまっていたのだ。
だが、が彼女になった、という事柄だけは、確信を持って胸に刻まれている。何故か。

あぁ、に早く会いたい

フリオニールがそう想い耽っていると、当の本人がひょっこり目の前に現れた。

「フリオニール」
「わっ!?」

ビクンと心臓が跳ね飛ぶ。
気配を感じなかった為、思わずフリオニールは驚き身を引いた。
はフリオニールの反応など気にせず、距離を縮めて腰に手を回した。

「!?ど、どうしたんだ、

答えることなく、はフリオニールを抱きしめた。
ばくばくばくばくと激しい音が内側から響いている。
と密着する体。
嬉しい!
めっちゃ嬉しく、こうすることを望んでいたが、あまりに慣れてない為、フリオニールは若干パニックを起こした。

「あ、あ、暑くないか!?こここ、こんないつ誰が見てるか分からない場所で、そのっ・・・・あ、いや嫌って訳じゃないんだ!あああ最初のいやは嫌いって意味じゃなく」

若干どころではなかった。
1人で勝手に慌てふためくフリオニールだが、は微動だにすることなく、回した腕も離さない。
黙ったままのが気になって、フリオニールは再び声を掛けた。

「・・・・・・・・・・えと、?」
「フリオニール・・・・私を抱いて」

ブッ

フリオニールは上空に向けて鼻血を吹き飛ばした。
にぶちまけることだけは回避出来たが、なかなか酷い状態である。体中にある血という血が鼻に集結しているかの如くだ。
すると今度は、無表情のが容赦なくティッシュを自分の鼻に突っ込んできた。

「えぇ!?どこから・・・・・ってちょ、まっ、待って!無理!無理もう入らなっ・・・・うぅうう!!!!」

あろうことかは鼻だけでなく口にもティッシュを突っ込み始めて、フリオニールはまともに喋ることができず、苦しみ悶えた。
強く彼女に訴えることも出来ず、涙目になりながらも必死に身振り手振りでアピールするが、は表情一つ変えやしない。

何でぇえええ!?これは試練だとでも言うのか!?、苦しいよーーーー!!!!!







「・・・・・・・・」
「まーだ起きないのな!すんげぇ耐えてる」

バッツは笑いを噛み殺しながら、目の前でジタバタ足掻いているフリオニールを見ていた。
隣のジタンも最初は面白がっていたが、苦しみ方が異常な為若干引いていた。
ティッシュを鼻だけでなく口に含んでも目覚めることなく格闘しているフリオニールは、大変間抜けである。

今日もコスモス陣は平和です。






END






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あとがき


今気付いたけど、私って朝ネタ好きですね!笑
単純に、哀れな夢オチですがフリオニールに美味しい思いをさせてあげようかな〜と思ったのです。
哀れな夢オチですが(大事なことなので2回言いました)


更新日:2010/10/12