Another.2





気付いたら、私はベッドの上にいた。
妙な倦怠感が、主に腰回りを中心にある。あぁそっか。あれは夢なんかじゃないよね。
起き上がる気になれず、はそのままボーっとしていた。
何気なく天井を見ていても、頭に浮かんでくるのは豹変したバッツのこと。
あれは本当にバッツだったのか。
バッツだとして、何で急にアナザーという人格が出てきたのか。
彼はずっとあのままなのか。

バッツが自分に向けた愛。
アレはほんとに愛?恐怖でしかなかった。
歪み過ぎて、受け止めることなど出来そうにない。

「・・・・・・本当に、夢だったら良いのに」

ポツリと呟いた言葉に、誰かが反応してくれる訳もなく、虚しさと静寂だけが辺りに残った。
ふと、もうバッツが元のバッツに戻っている可能性も頭に過ぎる。
体が一緒、記憶も一緒なら、完全に乗っ取られる訳じゃないだろう、たぶん。
普通のバッツだったら、文句が言える。蹴り飛ばせる。
もしアナザーのまま遭遇したら全力で逃げるが、確かめに行かないことには始まらない。
億劫ながらも、は起き上がり身支度をした。
服が昨日のままで嫌悪を覚えたので、別の物に着替える。サッサと洗おう。うん。
は部屋を出た。

ここはコスモスの陣地。
みんなの宿営地なのに、不気味な程の静けさである。
普段なら、誰か1人ぐらい、残っていてもおかしくないのに。
心にざわめきが起こるが、それは自分が弱気だからだと振り切って、は建物内をくまなく歩く。
しかし、人の気配は全くなく、仲間の部屋を確認すればするほど不安が沸々と湧き上がってくる。
どの部屋も、生活感の欠片もないのである。何も出しっぱなしになっていない、どこもおかしいところがないキッチリ整えられた部屋は、色がなく、本当にみんなここで生活してたのかと疑う程。

何かが、起きてる

不安や恐怖は拭いようがないが、気を引き締めて慎重に歩く。
最後の部屋を確認しようか、というところで、背後から声がした。

!もう大丈夫なのか?」

一瞬はビクッと身を強ばらせる。
振り向くと、そこにいたのはフリオニールだった。
仲間の登場、しかしは固まってしまった。
そこにいる彼は、いつもと違う恰好をしている。
バンダナではなく額当てをし、前髪を上げているフリオニールは、一瞬違う知らない人かと思った。
だが声も、心配そうに見つめてくる表情も、いつものフリオニールと変わりない。
は恐る恐る訊ねた。

「何でいつもと違う恰好してるの?」
「ん?これか?たまには良いじゃないか。だって違う服着てるだろ」
「あ、うん、そうだよね」

あははと力なく笑う。
確かに言われてみれば、一生同じ服着なきゃいけない訳ないし、髪だって染めようが自由だ。
違う恰好をしていたって、当たり前。私だって着替えたのだから。
考え過ぎだとは落ち着きを取り戻す。目の前にいるのはフリオニールだ。
余裕が出来れば、聞きたいことは山程ある。

「ねぇ、みんなは?バッツはどこ?」
「居場所は分からないが、みんな出掛けてる。バッツに用があるのか?」
「うん・・・」

本当に用があるのかは、分からない。確かめたいだけだから。

「・・・あのさ、バッツにどこかおかしいとこなかった?」
「いや、変わりないと思うが。何かあったのか?」
「ううん、別に」

フリオニールが不思議そうに首を傾げるが、は誤魔化して笑う。
言ったところでしょうがない。仲間割れになるのは勘弁だし。

「ありがと、じゃね」

軽く礼を言ってはその場を去ろうとする。
しかしその途端、空気が変わった。
不気味な声が轟く。

「待てよ。今日は俺の番だろ?」

背筋がゾッとした。
あの時と同じ、深い深い闇。
ヤバい、まさか、と驚愕に足が竦んでいる内に、後ろからナイフ付きのロープが伸びてきた。

「!?」

気付いた時には遅い。
ロープはグルグルの体に巻きついて、そのまま後ろに引っ張られる。

ダンッ!
「ぐっ」

そして横っ腹を蹴られ壁に叩きつけられた。
背後から押さえつけられ挟まれる。すぐ側にはフリオニールの顔。
先程までの表情から一変、目をひん剥いてニタリと口端を上げて笑う彼は、やはりバッツと同様。

「アナザーか・・・・!」
「ご名答。バッツばっかりズルいだろ、ずっと待ってたんだから」
「っ!知って」
「もう大丈夫なんだもんな。遠慮なく出来て嬉しいぜ」

そう言って服の上から全身を弄ってくる。
完全に両手両足、ロープに絡め捕られ身動き一つできず、堪えるしかない。

「やめて!」
「やーだね。目の前に最高の獲物がいるのに喰わない男はいないだろ」

フリオニールはの髪をかき揚げると、うなじに舌をつけ舐め上げた。
そして強く吸い上げる。ちゅ、という音と共にの肌に赤い花が咲いた。
体に巻きついているロープと服をずらしながら、同様に丹念に舐めては痕をつけていく。
の体はビクビク震えた。

「どう、して」
「んあ?」
「フリオニールまで、なんで」
「それは童貞のくせに、という意味か?」
「ち、ちが」
「ノーマルが知らないだけで、美味しいとこはいつも俺が頂いてましたとさ。
 だからアイツに悪気はないんだ、純真なままでいさせてやってくれよ」

何、それ。そんなことってあるの・・・・?
普段の彼らが知らない、彼らの中にずっと潜んでいたもう1人の人間。

ガリッ
「いっ!!!」

肩に強烈な痛みが走った。噛まれた。
ジンジン痺れるように変わった痛みからは、生温いものが滲み出る。
フリオニールの顔は見えない。
けれど恍惚とした声が聞こえてしまった。

の血、綺麗だなぁっ・・・」
「!!」

恐怖に呑み込まれる瞬間だった。

「・・・・っいや!いやあああああああ!!!」



泣き叫んでも、誰も助けてはくれない。






END






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あとがき

またまた寸止(ry
どこかでフリオニールは血を見るのが好きだとかいうのを見たので(確か元ネタはFF2の小説)
バッツ以上にバイオレンス。おおおお怖い((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
連載というには結末とか解決方法考えてないので、前のと繋がってるけど、ノリで・・・・
ダークエロが書きたくなったら更新される的な感じで(オイ)


更新日:2009/09/19