「よう、」
空気が変わった。
冷たく刺すような風を纏い、私の目の前に立っているのは紛れもなくバッツなのだが、バッツじゃない。
銀髪に、奇抜な色の組み合わせの服を着た彼は、口端を上げて笑った。
Another.1
目を見開いて固まるを見て、バッツは不思議そうに顔をしかめる。
「どーした?何かあったか?」
「・・・・・それは、こっちの台詞だよ」
本当に姿形はバッツなのに、それが嘘のように、目の錯覚だと思うぐらい、肌で感じる空気の圧力が違う。
とても暗く、しかし光にも臆することなく手を伸ばし侵食してしまいそうな闇。
思わず、は一歩後退りする。
それに合わせて、バッツは一歩前に出る。
「顔色悪いぜ。こっち来いよ」
「遠慮する」
「何で?俺たち仲間だろ」
いや違う。お前は違う。
直感的に、は身の危険を感じ、鞘に納まっている双剣に手をつけた。
が。
それが戦闘の合図となって、バッツはに向かって一直線に飛び込んできた。
「!?」
ガキン
咄嗟に剣を抜き眼前で双剣を交差させバッツの初手に耐える。
バッツは片手でバスターソードをぶつけてきた。
両手で防いでいるのに、降りかかる重みがハンパない。このままじゃ押しつぶされる!
一か八かでバッツの横っ腹に蹴りをいれようと右足を振るが、それはアッサリとバッツに掴まれ無駄に終わった。
そしてそのまま足を引っ張られ、双剣も弾かれ一気に体勢を崩された。
「うぐっ」
地面に体を打ち付け痛みが走る。
その直後、頭のすぐ隣にバスターソードが刺さり、から血の気が失せた。
バッツが馬乗りになって見下ろしてくる。
しっかり両脚に体重をかけられ固定されてしまい、逃げられない。
「もう終わり?」
無邪気に笑いかけてくる彼は、決して楽しいのではなく、遊び足りなくてつまらなそう。
殺される。
その1つだけが思考を支配した。
バッツの淡々とした声が、どこか遠いところから聞こえてくるようである。
「もっと強いかと思ってたんだけどなー・・・・・・ま、いっか。これはこれで楽だし」
そう言ってバッツはの首元に手を伸ばした。
咄嗟に両手を出して抵抗するが、それはバッツに手を差し出すことと同義になってしまった。
両手首を掴まれ、顔の両脇の地面に押さえつけられ完全に拘束された形となる。
握られている箇所が痛くては顔を歪める。
「足掻いたって無駄だよ」
「ぐぁっ・・・・」
手に込める力を強くすれば、は更に顔を歪めた。
バッツは楽しそうにを見つめている。
くっそ・・・・・・ほんとに、どうしたというのだろう。
バッツは、バッツはどこに行った?
どうせ殺されるとしても、悪あがきはするし真実が知りたい。
は声を絞り出した。
「・・・・・・・バッツは、どこ」
「おれだよ」
「違う、あんたは違う、バッツじゃない」
「酷いな。仲間の顔忘れたのか?」
「お前がバッツの名を語るな!!」
吐き出した声に、呼吸が荒くなる。胸が熱い。顔も熱い。
気付けば手首の痛みもなく、正面から残虐な男を睨み付けた。
男はというと、笑みは消え失せ冷めた目をこちらに投げかけていた。
冷たい表情。その温もりの無さに、一瞬はビクッと震える。
バッツは顔を近付けてきた。
「いやっ!」
顔を逸らすと、頬を舌で舐められる。
唾液のついた舌は、ぬっとりと嫌な感触しかしない。
背筋が凍る。
思わずギュッと目を瞑ると、頬から耳元に舌が移動した。
あろうことか耳を口に含み味わい出したのである。
グチュグチュと嫌な水音が直接脳に響く。
塞ぎようがなくて、の全身が震える。
「ひゃあ!や、やめ」
「すっげぇ信頼されてんなぁ、おれ」
「だ、だから、お前じゃ」
「さすがノーマルのおれ」
耳に直接囁かれているのだから、聞き間違いようがなくって、の思考が止まった。
なに、え?ノーマル?ノーマルのおれって・・・・
驚き固まってるに、バッツは楽しそうに喉の奥を鳴らすと、再びの耳を舐め回した。
「おれはアナザー。バッツのもう一つの人格と考えて良いぜ」
「あっ・・・・・・ぐ・・・・」
「だから体は一緒。記憶も、見てきた物も一緒」
「んん・・・やっ・・・・・」
「、ずっとお前のこと見てたんだぜ」
バッツが顔を離す。
すっかりの耳はふやけ、唾液で膜が張られ、気持ち悪い。
音が遠くなっていた。
恥辱で顔を赤く染め逸らしているに、降り注ぐ言葉。
「が欲しい。おれがぐちゃぐちゃにしてやりたい」
そうして噛み付くようにに口付けた。
殺されなかった。
けど、もっと残酷な運命を辿ってしまった気がする。
END
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あとがき
表に置いとく為寸止め笑
私的に裏行きになるのは脱いじゃうかいれちゃうかだと思ってる。
え、そんな話いらない?^^
アナザーバッツのあの鬼畜そうな色合いというかなんというか、雰囲気?はハンパない。
案外楽しいなぁアナザー!笑
続くか分からないけど、これのフリオ版(もちろん鬼畜)も書きたい。
更新日:2009/09/16