敵襲





















「好きです、殿。愛しています」



は固まった。
次第に大きく鼓動を刻む心臓。
夕日をバックに優しく微笑む陸遜が眩しい。
ハッと我に返り改めて事を認識したは、顔を真っ赤にし経験したことないようなパニックに陥った。



「えっ嘘だよね!?りりり陸遜が私なんて、そんな訳ない!違う、絶対ない!ないない!ぎゃーーー!!!」

「・・・・殿」



の興奮収まらぬまま陸遜の顔が近づいてくる。
陸遜の前髪が、睫毛が、吐息が、の顔にかかってくる。
あああちょっと陸遜何する気!?

陸遜、陸遜ーーー!!!



は思いっきり目を瞑った。
・・・・・・・・・・・・・しかし、一向に何も感触はないし、いつの間にか気配さえもない。
は恐る恐る目を開け・・・・・・・・

















・・・・・・・・・・目を覚ました。
目線の先には天井がある。
毛布のぬくぬくした気持ちいい肌触りを感じる。
自分は寝ていたのだ。



「・・・・・・・・・ゆ、夢?」

カーーッ



夢と知って尚、その内容があまりにも恥ずかしく再びは顔を赤らめた。



「な、何て夢見てんの私・・・・・・・・」



つい口元を手で押さえるが、頬の赤みが消える訳ではない。
はその場から動けなくなった。
が、あまりに爽やかで明るい日差しにハッと気付く。



「あれ!?今何時!?えっ・・・・・・ぎゃあああああ!!!」



宴の翌日、早速は寝坊した。
せっかく早寝早起きにも慣れてきてたのに、ちょっと夜更かしすると直ぐこれだ。
酒が入ったせいもあるだろう。寝心地はとても良かった。
ついでにあんな恥ずかしい夢を見てしまったし。
この体は一定の睡眠時間以上をとらないと満足しないようで、まだ自分でコントロールすることは無理なようだ。
携帯電話を目覚まし時計に使うことは出来るが、電源を落として節約している残りの充電量が勿体無く感じる。

まぁとにかく寝坊した。

携帯で時間を確認したらもうお昼時。
の部屋にわざわざ起こしに来るような野暮なことはしないが、きっと陸遜は怒りと呆れで神経をすり減らしているに違いない。
小言は確実、実際手を上げられたことはないが、が失敗するといつも燃やしてやろうかオーラを発している。
流石に本気ではないだろうが身の危険は感じる。いつプッツンと切れてもおかしくはない。
甘寧には実際火矢ぶっ放してるし。

どう謝ろうか。



着実に陸遜の執務室に近づきつつ、が考えあぐねいていると、突然後ろから誰かに物凄い勢いで抱きしめられた。



殿ー♪」

「うぎゃっ!?」



色気の欠片もない悲鳴をあげ、は前方に倒れかかるが、それは抱きついてきた者によって支えられた。
突然の出来事には目をまん丸に見開く。



「だ、誰!?ちょ、放して!!」



痴漢か何かか。
は現代でそういう目に遭ったことがないが、いきなり抱きついてくるこの自分より背の高い男は痴漢と思っても良いのだろう。
放れたくて腕の中で暴れるが、相手はびくともしなかった。



殿お会いしたかった・・・・・・・昨夜のあなたのお姿がずっと頭から離れませんでした・・・・・」



男がわざとらしく耳元で囁くのでの体中にブルリと悪寒が走る。

宴!?え、本当に誰!?

振り返って顔を確認したくも首が180度曲がる訳ではなく、しかも自分は相手の胸辺りの身長で見上げる形になるのだ。
よく見えない。
2回も相手は自分の名前をハッキリ呼んだのだから知り合いかもしれない。
声もどことなく聞いたことあるような。

しかしどんなに記憶を巡らせても、こんないきなり抱きついて変なことを言ってくる男に覚えはなかった。



「やだ・・・・・・放してって言ってん」

「姜維殿!何をやっているのですか!」



放す気配のない男に苛立ちを覚え思わず乱暴な言葉を吐き出しそうになったが、その前に怒りの声が飛び込んできた。
陸遜だ。顔を見ずとも聞き慣れた声に誰だか一発で分かるが・・・・・・・・・

・・・・・・・理解出来ない言葉が出てこなかっただろうか。

は思わず近くに姜維が居るのかと顔を正面に向けた。
すると目に入ったのは陸遜で、陸遜は明らかにこちらを見ている。
陸遜がギロッとこちらを睨みつけることで、に纏わりついていた腕が離れていった。



「これは陸遜殿。実は道に迷ってしまいまして」

「道に迷うと女人に抱きつくのですか?大層困った体ですね」

「ええ、なので本当はまだ触れていたいのですよ」



姜維が悪びれもせず再びの肩に手を伸ばそうとするので、苛立ちのまますかさず陸遜は間を割って、を守るように背の後ろへと回した。
一応2人共笑顔なのだが、醸し出す雰囲気やら言葉にあからさまに棘が混じっている。
特に陸遜はピシピシと今にも面の皮が剥けそうだ。超無理して笑顔を作っている。

はやっと正面から姜維を見て、現実を見て、悲鳴をあげた。



「きょ、姜維ーーー!!?」

「あ、もう名前覚えて下さったんですか?嬉しいです」



ニッコリ笑顔を向けてくる姜維に対し、開いた口が塞がらなかった。

姜維!?変態の正体が姜維!?
嘘だ、あの丞相丞相言っててなんとなく影が薄い(失礼)姜維が!!

道理で聞いたことあるような声のはずである。孫権と姜維は同じ声優なのだから(はそこまで覚えてないが)
目をゴシゴシさすってみても、夢なんかでなく見間違えでもなく姜維で、美形の姜維に先程まで抱きしめられてたのかと思うと急に恥ずかしくなり顔が赤くなった。
の変化に気付いた陸遜はムッと更に表情を固くすると、にこっそり耳打ちした。



「今日は私の手伝いではなく、孫権殿の側にいるように」

「えっ?何で・・・」

「姜維殿、迷ったというのは会議室までですか?私がご案内致しましょう」

「いえ、確かに会議室ですが陸遜殿の手を患わせる訳には・・・・・殿にお願いし」

「彼女は彼女で忙しいのです。ほら、行きますよ」



陸遜は強引に姜維の服の裾を掴み歩き出した。



殿、また会いましょう!」



ブンブン手を振りながら声高々に、姜維は引きずられながらも言った。
は呆然として、2人の姿が見えなくなるまで突っ立っていた。



「な、何だったんだ・・・・・・・・」



訳が分からない。姜維にも驚いたが。
釈然としない面があるものの、ちゃんと理由があるかもしれないしは陸遜が残していった指示に従うことにした。
















「陸遜が私の元へ行けと?別に私は何も困ってないぞ」



孫権の部屋にやってきたは、事情を説明するもそう言われて何とも言えない顔をした。
孫権は読み書きの勉強をしている最中で、側に周泰が控えている。
陸遜から何も聞いていないらしい。
側にいろってことは護衛しろ(?)ってことだろうが、周泰がいるしそもそもに誰かを護衛するだけの力はないのだから別に意味があるのだろう。
しかしよく、分からない。
まぁ小言を聞きながら仕事よりは楽かぁ・・・・・・・少しだるいし。



「・・・・孫権、とりあえず側に居て良い?邪魔はしないから」

「えっ!?あ、あぁべべべ別に、私は・・・・構わないが・・・・・」



顔を赤くしてしどろもどろに言う孫権だったが、は全く見ていなかった。
隣では、周泰が・・・・・・頑張れ・・・・・・と心の中でエールを送っていた。





は邪魔しないと宣言したので、それ以上口を開くことなく大人しくしていた。
シーンと辺りが静まり返る。
3人も居るのに無言のこの状態。重い。
重いと感じてるのは孫権だけで、と周泰は何も気にしてないのだが、1人だけ勉強していてジッと見られてる気がするし、密かに好意を抱いてるがいるしで、孫権にとっては物凄く居たたまれない。
これじゃ逆に集中出来ない。
絶対は今暇な筈だ。
一緒に居る以上退屈させたくないと思うのが人ってもの。

孫権は筆を持ちながらも何か話題、何か話題とひたすら思考をそっちに巡らせていた。



「はっ!?」



しかしそれより先に気になる気配を孫権は感知した。
静かに立ち上がって、いつでも駆け出せるように体勢を低く構えて蟹歩きする。
周泰はいち早く孫権が何をしたいのか悟ると動いて彼の側に寄った。
だけが理解出来ず首を傾げる。
孫権は少し顔を青ざめさせながら、小声で言った。



「や、あ、、すすすすまないが、私はここから離れるっ。いい一緒に、来るか?」



おどおどしながら、既に扉を開けつつ孫権はを見る。
見られたって何が何だか。
どうして急に焦りだしたんだ。
分からないが、とにかく孫権は急いでるようだし、が陸遜から受けた仕事は孫権の側に居ること。
ついてくしかない。
訊ねる前にはコクッと頷いて孫権について行った。












っ殿ー!!!」



その後1分も経たない内に、姜維が窓の外から達が居た部屋へと顔を覗かせた。
本人が居たらどっから湧いて出たとツッコミが飛びそうだが、誰の声もなく、姿もないので姜維は首を傾げる。



「あれ?おっかしーなー、気配がしたのに」



せっかく会議を抜け出したというのに、居ないのでは仕方ない。
姜維はまた別の方向へと歩いていった。














こんな攻防を、の知らぬ間に何度もやることとなる。












「お待ちどーさまでーす!」

「ありがとうございまーす」



お昼時、ご飯を食べようと厨房に頼んで、今まさに出来上がって食べようとしている時でも



「はっ!?いいい行くぞ」

「御意」

「えっ!?ちょ、ご飯は!?」

「後でだっ」



孫権はジッとしていられず席を立つ。
その数分後。



「ここかー!!」



ズシャアアアとスライディングしながら姜維が現れる。
他に食堂で食べていた者はギョッとして姜維を見るも、彼は全く気にせず、目当ての人物がいないのでまた移動する。



















「ちょ、ちょっと庭にでも出ようか」



歩いていて、外から流れてくる微風に引き寄せられたのか、孫権から言い出した事なのに



「!?ややややっぱり駄目だ!戻ろう!自室に行こう!!」



そう言って結局、執務室でもない、孫家とその側近・重役しか入れない奥の間へと引きこもった。
流石にも疲れる。
1回目場所移動した際には、嫌な予感がするからと、ただそれだけで詳しく教えてもらえなかったが、これはちょっと異常過ぎる。
孫権は怯えてるようなのであまり問い詰めようとは思わないが、理由を知る権利はある筈だ。
スッと孫権を見据えては訊いた。



「ねぇ、何から逃げてるの?」

「いっいやそれは、ハッキリとは言えないが・・・・・・・」



相変わらず口ごもる孫権が焦れったい。
気の長いちゃんもプッツンと切れちゃうぞ。
そんな風に思考を逸らしながら孫権の次の言葉を待ってると、見かねた周泰が口を挟んだ。



「孫権様は・・・・・他の者より気配に敏感・・・・・・・・危険を・・・察知しているだけ・・・・・」

「危険?誰かに狙われてるの!?」



それだったら一大事である。
あんなホイホイ出歩かずさっさとここに引きこもって、陸遜達に知らせて犯人を捜すべき――
焦って部屋を出ようとするを、孫権が慌てて止める。



「い、いやそんな大事ではない!・・・と思う。危険というか、その、言いにくいが苦手な人も避けるようにしてるから、初めてではないんだ」



だから周泰も慌てる事なくいつも通り付き従っている。
実際苦手ということで、初めの頃はと遭遇しないという芸当もやってのけた(気が抜けててバッタリ会った訳だが)
孫権は続ける。



「ただいつもより多くて、それで不安でここに来た。ここなら信頼の置ける知り合いしか来れないから」



言い終わって、やっと理由がハッキリした。
成る程、今は蜀将が来ている。
きっとあんまり喋った事なくて苦手意識を持ってる者が多いのだろう。
それでも歩き回ってたのはが一緒に居たから、というのは孫権の心の中に伏せておくが、十分は納得した。



「それより、あの、連れ回してすまなかった」

「えっ?あ、別に良いよ。頼まれてたことだし」

「陸遜に・・・・だったか?」



は頷く。
は理由が分からず首を傾げているが、孫権も考えたところで分からない。
と共に過ごす時間を与えてくれたことに感謝したいが、あの陸遜が自分の為にと思ってする訳がない。
好かれてないのは孫権だって分かっている。時々恐い顔するし。を気に入ってるみたいだし。
まさか、諦めて譲ってくれるのか・・・・!?と孫権は有り得ない期待を寄せつつ、首を横に振った。



「私にも分からないが、も、もうそろそろ日が落ちるし、休んで良いと思うぞ」

「ん・・・・・ありがと」



一瞬考え込むような表情を見せるもニコッと笑ってくれるに癒やしを感じながら、孫権は彼女が部屋を後にするのを見送った。












「り〜く〜そ〜ん〜殿〜っ!」

「これは姜維殿。どういたしました?」



キタ、と思いながらも陸遜はニッコリ笑って迎え入れる。
煩わしいが、自分の元に直接来たということは上手くいってるのだろう。
けっけっけっざまーみろ・・・・なんて口では絶対言わなさそうな事を心の中で姜維に浴びせていた。
陸遜の心中に気付いているのか、ムスッと顔を歪めながら姜維は近付くと、陸遜の机をダンと叩いた。



殿をどこに隠したんですか?」

「隠した?何のことです?」

「とぼけないで頂きたい。どこに行っても殿に会えない!貴方が隠したんでしょう!」

「気のせいですよ。殿は今日は別件で働いてもらってるだけですし・・・・・ただ単に貴方の運がないのでは?」



最後は本心を隠しもせずハッと鼻で笑ってやった。
陸遜は座っているので見上げる形だが、さぞや姜維の目には憎たらしく映ってるだろう。
姜維はキッと睨んで少し考えるも、本来ならの定位置である向かいの椅子に座った。

何のつもりだ。

陸遜が怪訝に眉を寄せると、姜維はドシッと構えてキッパリ言った。



「決めました!殿に会う為ここで待たせていただきます」



うわウゼぇと陸遜は遂にあからさまに嫌な顔をした。
ただでさえが居なくて遅れてる仕事をこうして日の沈みかけてる今もやっているというのに、こいつが一緒にいることで余計腹立たしい。
邪魔でしかない。しかも何故ここまでに執着するんだ。一目惚れしたとでも言うつもりか?
陸遜は念を押して言う。



「いや、普通に邪魔なのですが」

「居ない者と思って頂いて結構です」

「それでも邪魔です」



自分勝手もいいとこだ。図々しい。
しかし相手は蜀将なので普段甘寧なんかにやってる実力行使は出来ないし、邪険に扱うべきではない。
既に長続きしない意地悪をしているが、それはバレなきゃ良いのだから良い。
姜維は断固として動かないつもりなのか、ドッシリ深く座ってジッと扉の方を見ていた。

あぁもういつまで粘るつもりだ。

仕事を放棄して帰りたいが、一応見られてまずい書簡とかも置いてあるので、こいつ1人残して出る訳にはいかない。
何でウチの殿危機感とかないのかな。蜀将の出入り出来る場所・時間帯を厳しく律して欲しい。
とりあえず顔を下ろし今やってる分だけでもと仕事を再開するが、集中出来ずいい加減な事を書いていた。
願わくば、殿が来ませんように。
せっかく孫権の危険察知能力を利用してを蜀将と特に姜維と会わせなかったんだ。
今日1日ぐらい成功して終わりたい。

しかし、あっさり期待は裏切られた。









「陸遜〜、まだいる?」



が扉を開け顔を覗かせた。
キョトンと間抜け面をしている。
思った矢先の結果に陸遜は手で顔を覆い、姜維はパァッと明るく表情を綻ばせすぐさま近寄り手を取った。
突然の行為にはビクッと身を引く。



殿!今朝は全く言葉を交わすことも出来ず残念でしたが、良く来てくださいました!」

「え、あぁうん、そうだね」



余りの姜維の勢いに少したじろぎ適当な返事をしつつ、は陸遜に顔を向けた。



「ねぇ、何で今日孫権についてろって言った・・・って何で変な顔してるの」

「別に。何か起こりました?」

「いや、特には・・・・・・」



この場合の言う変な顔とは眉間に皺寄せ胡散臭いものを見る目に口をイーッと横開きした状態だ。
要約すると何が言いたい。
問いの意味もよく分からず、気になるのだが、陸遜は素っ気なく「そうですか」と会話を終わらせて、仕事を始めてしまった。
・・・・・・・何で今日はこんなに冷たいのか。
いや優しい時があった覚えはないが、何だか厄介払いをされていたような気もしだして、腑に落ちない。

と陸遜の間に妙な空気が流れ出したが、すっかり置いてけぼりにされたままで黙っている姜維ではない。



殿はこの後暇ですか?」

「えっ?・・・・・・・・・暇なの?」



は陸遜を見る。
すると彼は目もくれず冷たく言い放った。



「勤務時間は既に過ぎてますのでどうぞご自由に」

「でしたら私達の泊まっている部屋へと遊びに来ませんか!?」



さぁさぁと引き込む姜維だが、はどうも陸遜のことが引っ掛かって止まっていた。
勤務時間は終わったといえど、いつもなら陸遜も終えてるこの時間、なのに彼はまだやっている。
もしや自分の分までやっているのではないか。
宴前はが一挙に引き受け決めかねる物は保留として積み重ねられていったから、進行状況や内容が把握出来てない物もあったろう。
孫権についてたと言っても遊んでいたようなものだし、手伝うのぐらい苦にならない。
姜維と蜀の面々の元へ、というのはとても魅力的で行ってみたいが、今の時間1人で、というのはちょっと恐い。
いや女の身だからとかそんな心配はしないが、一方的に知ってるとはいえ・・・・・いや知ってるからこそ緊張するし恥ずかしいではないか。
何かヘマした場合ツッコミしてくれる者がほしい。
それに暫くは居るみたいだから、急ぐ必要もない。

は残る事を決めると、姜維の手を解き真っ直ぐ見た。



「ごめん、今日は止めとく。今度時間ある時、ゆっくり行きたいな」

「えぇ〜!?」



眉尻を下げ残念そうな姜維にごめん、と再度両手を合わせ謝る。
誘ってくれたのは嬉しいが、もう決めた事だ。
姜維はむ〜と口を尖らせていたが、嬉しい言葉も聞けたし納得した。



「今度、必ずですよ!約束ですからね殿!」

「うん、またね〜」



姜維はと陸遜にそれぞれ違う意味での笑顔を向けてから、嬉しそうに去っていった。
はヒラヒラと手を振って見送った。
何で姜維はあんなに私に纏わりついてたんだ?と疑問が浮かぶが、好意なので悪い気はしない。
クルリと踵を返しやっと定位置の椅子に座ると、陸遜が喋りかけてくれた。



「賢明な判断ですね。今からでは迷惑にもなるでしょうし」

「やっぱそうだよねー、うんっ私も賢くなったー!」

「このぐらい当たり前ですよ」



淡々と冷めた言葉であるが、やっといつも通り会話してくれては心が温かくなった。
何だ、別に怒ってたとかじゃなくて姜維が居たから静かにしてただけか。
孫権も実は極秘任務だったかもしれないし。ちょっと安心した。
は自分でも気付かぬ内に頬を綻ばせて言った。



「大変でしょ、手伝うよ」



その言葉にピクッと陸遜の動きが止まる。
そしてキョトンとした顔でを見た。



「もう良いですと言いましたが・・・・・?」

「勤務時間外は自由でしょ?だったら勝手に手伝うだけだから気にしないで」



筆と墨汁を準備しながら何すれば良いと訊くに、陸遜は呆気にとられていた。
まさか自ら手伝おうとするとは思っていなかったし、それに自由って分かっている上で姜維ではなく自分を選んでくれて・・・・

陸遜は勢いよく立ち上がった。
ズカズカと後ろの未処理の書簡達の中からが出来そうなのを次々と取る。

その顔は、赤かった。



「はい、これ!!」

「ちょ、多っ!徹夜させる気!?」



ドンとの目の前に置いて陸遜はまた椅子に腰掛けた。
喚くをもう見ない。書類に手を付ける。



「手伝うと言ったのは貴女です。徹夜したくないならさっさと手を動かす!」

「は〜い」



観念した声をだし、もいそいそと作業を始めた。






眠いし辛いが、心温まる時間だった。

















END














−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

言い訳


いやっふーらぶらぶぅううう!!(何急に)
自分で書いときながら歯痒くなってくるんですよ!読む分にはいいけど、書くのは慣れてないんですよこーいうラブラブ!
ぐおおおお頑張れ私。頑張るってなんだ私。
今回は奴の登場でした。ハッキリ陸遜とライバルです。夢小説の奴は普通に黒いです。
奴がかなり積極的なので、これから陸遜も焦る場面があったりなんだり、状況が変わってくると
嬉しいなー(殴)
蜀の介入により、ようやく逆ハーっぽくなりそうです。
まぁ基本的にヒロインが被害者に変わりないんですけどね!!(ぇ)





更新日:2008/11/08